研究課題/領域番号 |
19KK0392
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀田 紀文 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00323478)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2021
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キーワード | 土壌侵食モデル / GeoWEPP / 土砂流出 / 土石流数値計算 / 微細土砂 / 土石流 / 斜面崩壊 |
研究実績の概要 |
2020年度は,本研究で設定した (1) 土壌浸食モデルの選定と適用,(2) 土石流モデルの精緻化 について,以下のような結果を得た. (1) 土壌浸食モデルの選定と適用 山地森林流域の水収支と土砂流出の長期的な変化を把握するために,本研究では主要な土壌侵食モデルの一つであるGeoWEPPを用いた.対象地は,長期的な森林植生の変化が顕著であり,その間の観測データの蓄積がある東京大学生態水文研究所の白坂流域とした.裸地の空間分布の変遷を含む各種の現地データを用いたGeoWEPPによる長期計算結果から,水収支についての良好な再現性と,一方で土砂流出量の過少評価が明らかになった.土砂流出の計算結果は,裸地と河道の間も裸地として取り扱い,土砂移動の連続性を担保することで,顕著に再現性が向上した.また,河道区間での土砂移動が長期的な土砂流出に影響を及ぼすことが示唆された. (2) 土石流モデルの精緻化 本研究では,土石流中の微細土砂の液相化(間隙流体への取り込み)をモデル化することで,土石流の数値シミュレーションの再現性の向上を目指している.2020年どは,申請段階で実施済みだった1次元のモデル計算を2次元に拡張した.2次元計算でも,基本的には1次元計算での再現性が高かった計算条件で実測値をよく再現するという結果を得た.また,1次元計算で再現性の低い条件下では,土石流による浸食・堆積域の空間分布が実態と大きく乖離することが明確となり,液相化の適切な評価で土石流の数値計算の再現性が向上するという1次元計算の結果を補強する結果が得られた.崩壊に起因する土石流においては,必ずしも常に液相化の考慮が再現性の向上に繋がるわけではないことも示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの影響で,当初予定していた渡米を行うことができなかった.共同研究者と相談しつつ研究は実施し,上記の成果を得ることができたが,特に細かなデータの確認においては,説明資料の作成や理解に時間がかかることを実感することとなった.また,先方のデータについては検討できていない. 一方で,日本での解析作業に集中する時間が確保できたことにより,土壌侵食モデルの適用も,土石流モデルの精緻化も,当初期待していたよりも大きな成果を得ることができた.成果の検証のために,追加の現地データ(主に地形測量)が必要であるが,こちらは,やはり新型コロナウィルスの影響で十分な調査が実施できなかったため,2021年度以降のデータ取得を計画している.
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今後の研究の推進方策 |
まずは,これまで得られた成果を取りまとめて,今度の共同研究を円滑・効果的に進められる態勢づくりを行う.そのうえで,引き続き2021年度も渡米の可能性については不透明であることを考慮し,今後の研究の推進方策について,先方と協議を行いたいと考えている.
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