研究課題/領域番号 |
19KK0393
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
佐々木 雄大 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (60550077)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2022
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キーワード | 生物多様性 / 生態系機能 / 山岳生態系 / 湿原生態系 / 温暖化 / 炭素隔離 |
研究実績の概要 |
低温・過湿環境下で植物遺体がほとんど分解されずに蓄積され続ける湿原生態系は、生物多様性の観点からだけでなく、近年の気候変動影響の緩和にとって重要な生態系機能である炭素蓄積機能を担っているという点でも注目に値する。山岳域や寒冷地の泥炭湿原は地球上の陸域面積のわずか3%程度しか占めないにもかかわらず、陸域全体の全炭素量の少なくとも20%以上を蓄積しているとされる。湿原植物の多様性の将来的な減少は、炭素隔離をはじめとする湿原生態系がもつ多くの機能に影響を与えることが大きく危惧される。 野外での生物多様性と生態系機能の関係性の検証は2010年頃より加速しているが、対象の生態系が草原および森林に偏っており、陸水域(湿原や湖沼など)や海域、都市域を対象とした研究は非常に少ない。湿原生態系を対象とした例はわずか数例で、そのうち生物多様性と炭素隔離機能の関係性を検証した例は存在しない。 そこでまず、日本の湿原生態系における植物および泥炭表層の微生物の多様性の変容が、全球的に重要な炭素動態に関わる複数の機能(植物生産量、分解速度、微生物バイオマス量、微生物呼吸量)にどのように影響を与えるかを明らかにすることとした。 青森県八甲田湿原群における対象20湿原の永久調査トランセクトにおいて、泥炭表層のコア(以下、微生物コア)をサンプリングし、微生物解析を行った。また、共同研究者によって、微生物コア中の微生物バイオマス・呼吸量の分析を行った。さらに、植物の地上部生産量、分解速度を計測した。得られたデータを整理し、現在、湿原の植物および微生物の多様性が複数の生態系機能に与える影響の解析を共同研究者と協力しながら進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題は国際共同研究であるが、COVID-19の影響により、国際共同研究機関への渡航が開始できていない。そのため、日本国内で行える調査や既存データの解析を中心に進めている。研究の推進に必要な議論については、リモートでのミーティングを行っている。しかしながら、共同研究機関に実際に足を運んで、国際的な研究ネットワークを活用するという点では限界があり、研究全体の進捗としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
報告書作成現在においても、COVID-19の影響は続いており、渡航ができない状況にある。そのため、現在進めている日本の湿原生態系のデータの解析を進め、論文を共同で作成するとともに、リモートでも進められる研究を進めていく予定である。また、リモートでのミーティングを定期的に行い、COVID-19の状況が改善されたときに備えて、渡航がすぐに開始可能となる状況を維持するように努める。
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