研究課題/領域番号 |
19KK0398
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平野 育生 東北大学, 医学系研究科, 講師 (00708117)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2023
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キーワード | GATA1 / Erythropoietin / GATA2 |
研究実績の概要 |
我々が同定したGATA阻害剤はEpo遺伝子の発現を誘導可能であるが、その機序は不明である。GATA転写因子はEpo遺伝子の発現を抑制していると考えられてが、Epo遺伝子プロモーター領域近傍のGATAモチーフに変異を加えたTTTA-Epoマウスの解析では、正常時においても貧血誘導下においても野生型マウスと比較して腎臓におけるEpo遺伝子の発現量が低下していた。そのためGATA阻害剤によるEpo遺伝子発現誘導効果は、すくなくともEpoプロモーター領域のGATAモチーフを介したものではないことが明らかとなった。 赤血球産生は、エリスロポエチン(EPO)シグナルや、転写因子GATA1により制御されている。また、同じGATA転写因子群の一つであるGATA2は未分化な段階の前駆細胞や造血幹細胞の分化を制御している。GATA阻害剤による造血への影響を解析するうえで、血球におけるGATA1、GATA2の機能を知ることは重要である。すでに実施したGata1 KDマウスの骨髄細胞を用いたscRNA-seq解析に加え、ヒトGata2欠損症患者で見つかる変異であるGata2R398Wを導入したマウスの骨髄細胞に対するscRNA-seq解析を行った。本年度は海外共同研究者の研究室へと赴き、彼らの知見を参考にこれらのデータを解析した。その結果、正常な血球分化に重要と考えられるGATA1、GATA2それぞれの標的遺伝子の候補を複数同定した。 興味深いことに、同Gata2変異マウスの骨髄細胞では、Gata2が高発現していることがすでに報告されている。現在、Gata2R398Wによる表現型の発症機序を解析しているが、もしGata2の発現量の増加が原因となっているのであれば、我々が同定したGATA阻害剤が治療目的で活用可能かもしれないと期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は予定通り、Epo遺伝子プロモーター領域のGATA結合モチーフに変異を加えたTTTA-Epoマウスの解析を行うことができた。その結果、我々が想定していた機序ではない未知の機序でGATA阻害剤はEpo遺伝子発現を誘導していることがわかった。その機序の解明にはさらなる解析が必要である。また、GATA阻害剤による造血細胞への影響を解析するため血球で発現するGATA因子、特にGATA1の働きを解析していたが、今回新たに造血幹細胞、前駆細胞で働くGATA2の機能に注目したscRNA-seq解析を行うことができた。そのため、研究の進捗状況としては計画より進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
海外共同研究者の研究室では、CD34陽性細胞を用いた赤血球分化誘導系の解析が多くなされており、多くの知見を有している。そこで、再度同研究室に赴き、CD34陽性細胞を用いた分化誘導系において同定したGATA1, GATA2標的遺伝子の血球分化への寄与を調べる。また、TTTA-Epoマウスの解析から、Epo遺伝子制御においてGATA因子は単純な転写抑制ではない機序で関与していることが示唆されたことから、Epo遺伝子のGATA因子による発現制御機構についてもTTTA-Epoマウスの解析に加えHep3B細胞などのEpo産生細胞株を用いた解析を進める予定である。
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