研究課題/領域番号 |
19KK0400
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
伊藤 友香 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (40454326)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2022
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キーワード | Smad / AP-1 / 転写 / グリオーマ |
研究実績の概要 |
TGF-βは細胞の増殖や分化、アポトーシスなど様々な細胞応答に関与する増殖因子である。TGF-βは正常細胞だけでなくがん細胞に対しても作用し、上皮細胞由来腫瘍の増殖を抑制する一方で、転移や浸潤を促進する二面性を持つ。これまでに、このTGF-βの二面性について、TGF-βによって活性化される転写因子Smadによる遺伝子発現制御が注目されてきた。Smad2あるいはSmad3がTGF-β刺激依存的にリン酸化されると、リン酸化Smad2/3はSmad4とヘテロ三量体を形成し、核内に移行して転写因子として標的遺伝子の発現を制御する。一方、Smad複合体は他の転写因子と協調して転写を制御することも報告されており、このような転写因子はSmad cofactorと総称されている。本研究では、Smad cofactorであるAP-1とSmadの協調作用とTGF-βにより惹起される細胞応答の具体的な対応関係を明らかにすることを目的とする。 2020年度は、AP-1とSmadの協調的な転写活性化をモニタリングできるレポータープラスミドを作製した。このレポーターの活性化は蛍光タンパク質(GFPおよびmCherry)発現によって可視化することができる。また、Smadのみの活性化によって蛍光タンパク質の発現が誘導されるレポータープラスミド(CAGA-GFP、CAGA-mCherry)及び特定の転写因子結合配列を持たないプラスミドをコントロールとして作製した。次に、培養細胞を用いて作製したレポーターが機能することを確認した。現在、TGF-β依存的にEMTを誘導するがん細胞株を用いて、EMTによる細胞形態の変化とAP-1-Smad協調作用による転写活性化の関連について検討を開始したところである。 2020年度計画では、これらのレポータープラスミドを海外機関が所有するグリオーマ幹細胞株(GSCs)に導入し各種細胞応答を検討する予定であったが、共同研究先国への渡航制限のため、検討できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SmadとAP-1の協調作用を可視化するレポータープラスミドを構築することができた。一方、海外渡航が延期となったため、進捗に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
ウプサラ大学で所有する、複数のグリオーマ幹細胞(GSCs)に作製したレポータープラスミドを安定的に導入し、in vitroでの細胞増殖、運動性・浸潤性、幹細胞性とレポーター活性化の関連を比較する。また、このSmadとAP-1による転写活性化に関与するAP-1構成因子の同定を進める。最初に、GSCsにおいてSmad3の発現と相関のあるc-JunについてsgRNAによるノックアウトを行い、AP-1とSmadの協調作用による転写活性化や細胞増殖、浸潤性などについて野生型と比較する。変化がない場合、他のAP-1構成因子の関与についてノックダウンあるいはノックアウトにより検討する。
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