研究課題/領域番号 |
19KK0404
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
渡辺 雅人 杏林大学, 医学部, 非常勤講師 (00458902)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2021
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キーワード | 喘息 / 好中球 / IL-33 / sST2 / ST2 |
研究実績の概要 |
2020年度は「渡航前の国内での予備実験」として、難治性喘息のマウスモデルを作成するための予備的な条件検討を行った。マウスにIL-33を気管内投与し、24時間後に気管支肺胞洗浄液、肺組織の溶解物、肺の病理組織を解析した。マウスの気管支肺胞洗浄液中には大量の好中球が浸潤し、好中球細胞外トラップ(NET)の放出を示唆する代替マーカーであるdsDNA濃度が高かった。NET放出は喘息難治化に関与することが知られている。また、肺内でIL-13などの2型サイトカインの産生が亢進していた。これは、喘息様の気道炎症が起きていることを示す。よって、IL-33を気管内投与することで、好中球浸潤を伴う難治性喘息(いわゆる好中球性喘息)様の気道炎症マウスモデルを確立した。次に、血液、肺組織、気管支肺胞洗浄液の好中球をフローサイトメトリーで解析した。好中球の表面にIL-33受容体のST2が発現しており、IL-33を経気管投与するとST2の発現量が低下した。このことは、IL-33が好中球に直接作用して何らかの免疫反応を引き起こす可能性を示唆している。 マウスにアルテルナリア(環境中に存在する真菌でアレルゲン物質)を気管内投与した。気管支肺胞洗浄液中にIL-33が放出され、好中球性気道炎症が起こることを確認した。このことは、アルテルナリアの気管内投与は、自然免疫による難治性好中球性喘息の病態を反映するマウスモデルの一つであることを示唆する。 この他に、マウスに好中球エラスターゼ(活性化した好中球が分泌する酵素)を気管内投与するした。好中球エラスターゼの投与から24時間後には好中球性気道炎症が起こった。また、肺の細胞内でIL-33の発現が亢進し、一部は細胞外へ放出された。よって、好中球エラスターゼ投与が、IL-33の放出と好中球性気道炎症を引き起こすモデルの一つであることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内で行う予備実験は着実に進捗している。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、国内での予備実験の進捗は非常に緩徐である。さらに、カナダ国内でアウトブレイクが収束しないため、渡航の目途が立たない。
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今後の研究の推進方策 |
国内での予備実験を継続する。 (1) sST2の気管内投与がIL-33による好中球性喘息様の気道炎症を緩和するかを検証する。 (2) アルテルナリアの気管内投与モデルで、好中球性喘息様の気道炎症が起こっているかを検証する。 (3) IL-33の経気管内投与により好中球機能が変化するかを探索する。
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