研究実績の概要 |
2021年度は「渡航前の国内での予備実験」として、難治性喘息モデルにsST2 (Recombinant ST2-Fc)を投与し、好中球性気道炎症が改善するかを検討した。難治性喘息モデルとして、IL-33投与モデル、アルテルナリア投与モデルを用いた。(アルテルナリアは喘息の原因となる真菌で、肺胞内にIL-33を放出させる。) (1)マウスにIL-33 (2.5 μg)とST2-Fc (25 ug, 蛋白量はIL-33の10倍)を同時に気管内投与した。予想に反して、IL-33とST2-Fcを投与すると、IL-33を単独で投与する時よりも、気管支肺胞洗浄液 (BAL)中の好中球数が有意に増えた。また、BAL中の好中球性炎症マーカー (CXCL1、MMP9、dsDNA)やIL-33も高かった。IL-33とST2-Fcは、in vitroで複合体を形成していた。 (2)アルテルナリア (10 μg)とST2-Fc (25 ug)を同時に気管内投与した。アルテルナリアとST2-Fcを投与すると、アルテルナリアを単独で投与する時よりも、BAL中の好中球数が増えていた。 これらの結果は、ST2-FcがIL-33のリザーバーとして働き、マウスの肺内でIL-33活性を増強していることを示唆する。つまり、sST2-IL-33複合体は好中球性炎症を惹起する炎症物質であり、難治性喘息の新たな治療標的分子の可能性がある。最近報告されたIL-33trap (ST2とIL-1RAcPの融合蛋白)は、sST2よりもIL-33に対する結合親和性が30倍高く (Holgado, JACI 2019)、sST2-IL-33複合体の活性を阻害すると期待できる。
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