研究課題/領域番号 |
19KK0406
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮腰 昌利 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (60755809)
|
研究期間 (年度) |
2020 – 2023
|
キーワード | 転写後調節 / RNA-seq / small RNA |
研究実績の概要 |
細菌は様々な環境で生育するために転写、転写後、翻訳後等の各段階で遺伝子発現を適切に制御する必要があり、その機構を理解することは細菌感染症の抑止に重要である。これまでに細菌における転写後調節を司るsmall RNA (sRNA)と同様に、一部のmRNAの3´UTRが遺伝子発現を調節する機能を持つことが明らかになった。本研究では、サルモネラにおいてmRNA塩基配列から推測された複数の機能性3’UTRを同定し、それらの機能を解明することを目的とし、機能性3´UTRと塩基 対形成するsRNA、mRNA、tRNAなどの転写産物のペアを新規RNA-seq法により網羅する。 現在解析を進めているグルタミン合成酵素遺伝子glnAはサルモネラの病原性発現に重要であることが知られている。サルモネラにおいてglnA mRNAの3´UTRはRNase Eによって2種類のsRNA GlnZ1とGlnZ2をプロセシングすることを明らかにした。GlnZの標的mRNAを海外共同研究者が実施したサルモネラにおけるRNA-seq解析の結果を利用して探索した。GFP翻訳融合体の蛍光強度を蛍光マイクロプレートリーダーを用いて定量解析し、sucAをはじめとする複数の標的mRNAが実際に転写後調節を受けることを実証した。 サルモネラのRNA-RNA相互作用を網羅的に同定するRIL-seq解析に関して、渡航先外国機関から2022年2月にMol. Cell誌に発表された。申請者は2022年9月に渡航先外国機関に滞在し、研究成果について議論した後、2022年11月にeLifeに論文を発表した。また、スペインで開催されたEMBO Workshop BacNet22でポスター発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の蔓延による渡航制限のため、渡航先外国機関に予定通りに滞在することはできなかったが、渡航先外国機関から2022年2月にMol. Cell誌に発表されたサルモネラのRIL-seq解析に関して、申請者は事前に解析データを入手し、その結果を受けて解析を進めることができた。その研究成果は2022年11月にeLifeに論文発表した。論文作成の際には渡航先外国機関の協力を得ることができた。したがって、研究計画は十分に進捗し、すでに一定の目的を達成している。
|
今後の研究の推進方策 |
Jena大学Kai Papenfort教授のグループによりコレラ菌のRIL-seq解析に関する論文が2022年12月にNature Communicationsに発表された。この結果を詳細に解析し、本研究計画で実施しているRNA制御ネットワークに関する新たな研究計画を展開する。
|