マウス脂肪組織を採取し、コラゲナーゼ処理後、遠心分離を行い、成熟脂肪細胞とstromal vascular fraction(SVF)に分離した。成熟脂肪細胞を天井培養法によって、SVFをフラスコに播種することによって、脱分化脂肪細胞(DFATs)と脂肪組織由来幹細胞(ADSCs)を樹立した。凍結・解凍操作を繰り返し、両細胞の構造を破壊した後、遠心分離を行い、上清をDFATs由来細胞抽出物(CE-DFATs)、ADSCs由来細胞抽出物(CE-ADSCs)として獲得した。両細胞抽出物をシュワン細胞培地に添加したところ、CE-ADSCsにのみ細胞増殖効果が認められたことから、以後の実験にはCE-ADSCsを用いた。 シュワン細胞、PC12D細胞、DRGニューロンを準備し、培地にCE-ADSCs、または熱処理/プロテイナーゼK処理によってタンパクを不活性化したCE-ADSCsを添加した。CE-ADSCs添加群ではシュワン細胞の増殖、PC12D細胞/DRGニューロンの突起伸長効果が認められたが、タンパクを不活性化したCE-ADSCs添加群では、それらの効果が認められなかった。In Vitroでの神経系細胞に対するCE-ADSCsのポジティブな効果は、CE-ADSCsに含まれるタンパクによるものと推察された。 ラットの下歯槽神経を切断し、同部にCE-ADSCsとハイドロゲルを移植した。移植から12日後に神経トレーサーを注入し、三叉神経節を取り出した後、透明化処理を施し、2光子顕微鏡で撮影することで、三次元画像を構築した。トレーサーで標識された三叉神経節の細胞体は、生食移植群と比較してCE-ADSCs移植群で数が少なく、細胞の直径が大きいことが明らかとなった。In Vivoにおいても組織透明化と3次元イメージングの手法を用いて、末梢神経再生のメカニズム解明に向けた研究を行った。
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