研究課題/領域番号 |
19KT0006
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
坂巻 隆史 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60542074)
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研究分担者 |
林 俊介 法政大学, 理工学部, 教授 (20444482)
藤林 恵 九州大学, 工学研究院, 助教 (70552397)
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研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2023-03-31
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キーワード | カキ養殖 / 付着生物対策 / 養殖サイクル / 脂肪酸組成分析 |
研究実績の概要 |
1) 志津川湾内のカキ養殖場で実施されている付着生物除去とカキの生育促進のための温湯処理について,2019年9月から約5か月にわたり実施した現地実験で得られた試料の化学組成分析とデータ解析を継続して行った.それらの結果から,温湯処理によって,カキの生育や軟体部のEPA等有用脂肪酸含有量が非処理に比べて向上するとともに,美味しさの指標のひとつと考えられるグリコーゲンの含有量も相対的に高くなることが示された.さらに,養殖カキの殻表面に付着する他の生物種(イガイ,ホヤ等)についても脂肪酸組成分析を行い,餌資源の類似性の観点から,カキとの競合の強さを評価した結果,特にイガイと比較的強い競合関係にあることが示唆された. 2) 志津川湾において,継続的に実施している海域観測を行った.特に,湾内複数地点における粒状有機物の化学組成の季節サイクル,および河口部を中心とした河川水流入やそれに応答する植物プランクトンの消長に関して,今後のモデル解析に必要となる定量データの集積を継続して行った. 3) カキ養殖漁業者の漁業生産性・収益向上に手助けとなるツールの構築を念頭に,カキの生活史による生育速度の時間的変化と垂下密度による生育への影響を加味して,稚ガキ投入や収穫時期・量の最適条件を探索するためのモデル構築を行った.数理最適化のためのアルゴリズム構築や,計算条件の具体化のための漁業者からの情報収集などを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルス感染症拡大により,調査や実験室での試料処理に遅れが生じた.
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今後の研究の推進方策 |
1) 追加の試料分析とデータ解析を継続して行い,カキ養殖における温湯処理の効果を,カキの生産性・品質向上および有機汚濁負荷削減の観点から明らかにする. 2) 現場調査を継続的に実施するとともに取得データの解析を進め,志津川湾の各種養殖漁場における有機物動態の特性を明らかにするとともに,および各種生物の栄養要求ニッチェの明示化をすすめる. 3) 数理最適化モデルの構築と運用を進め,複合型養殖における養殖生物種の配置や施業サイクルを,生産基盤としての湾内環境や漁業者の収益等に照らして,最適化するための条件を導出する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症拡大により,調査や実験室での試料処理に遅れが生じた.それに伴い,消耗品・旅費・謝金などの支出が予定よりも大幅に少なかった.今後は,研究補助者を採用して作業の遅れを挽回する.それにより,研究費の支出も当初計画に近づくことが見込まれる.
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