研究課題/領域番号 |
19KT0013
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
後藤 貴文 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (70294907)
|
研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2022-03-31
|
キーワード | 牛肉生産 / 代謝プログラミング / 放牧 / ICT / エシカルマーケット |
研究実績の概要 |
現在の畜産は、高騰する輸入飼料相場に翻弄される経営困難、循環不可の過剰糞尿処理、BSE等の食の安全、脂肪過多牛肉志向で硬直したマーケット、さらに集約的飼養による動物福祉等、多くの問題を抱えている。新しい生物科学概念「代謝プログラミング」研究をシーズとして牛の代謝を早期に制御し、飼料には日本 の豊富な植物資源を放牧により高度活用し、その飼養管理には先端ICTを駆使する。さらに販売には、エシカル(倫理的な)ダイレクトマーケットを構築し、若 い農業者が未来に希望をもち、産業として世界と戦えるよう畜産業を構造改革し大革新することを目標とした。今年度は以下のような結果を得た。①代謝プログ ラミング研究:遺伝子発現解析、microRNA発現解析、骨格筋の組織化学的解析、メタボローム解析、血清を用いた培養によるin vitro解析、およびDNAメチル化解析を進め、メカニズムの一部を明らかとした。②ICT放牧管理システム:放牧肥育牛の素牛を生産するためのシステムとして、耳標とは別のタグ画像解析による個体認識をベースとした遠隔個体給餌システムのしくみの基盤を再構築した。インプラント体温センサーによるウシの発情看視システムの仕組みを構築した。③マーケティング:放牧牛肉の硬さに関係するコラーゲンについて蛍光免疫組織による3次元的構築により基盤的知見を得た。以上、今年度も黒毛和種における「代謝プログラミング」に関して分子生物学的解析を進めて、そのメカニズムの一端を明らかとし、日本の植物資源における牛肉生産、いわゆるタンパク質生産の最適メカニズムの一端を構築した。耕作放棄での放牧飼養に適した先端ICTシステムを構築した。さらに、そこから生産される牧草牛肉の肉質に関する基盤的知見を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
黒毛和種における「代謝プログラミング」に関して分子生物学的解析や組織化学的解析を進めて、そのメカニズムの一端を明らかとし、日本の植物資源における牛肉生産、いわゆるタンパク質生産の最適メカニズムの一端を構築した。耕作放棄地での放牧飼養に適した先端ICTシステムを基盤システムの一部を構築した。さらに、そこから生産される牧草牛肉のマーケティング構築に関して、肉質の解析を行うなど、概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
黒毛和種における「代謝プログラミング」に関して分子生物学的解析を進めており、さらに胎児期および新生児期の影響についても詳細に解析する。日本の植物資源における牛肉生産、いわゆるタンパク質生産の最適メカニズムの一端を構築する。今年度は、放牧地におけるモバイルカメラなどの活用性なども含めて、耕作放棄地の放牧飼養に適した先端ICTシステム等の基盤を構築する。さらに、そこから生産される牧草牛肉のマーケティング構築に関して、エシカル(倫理的な)な価値を高め、ダイレクトマーケットの構築に寄与する方法を見出したい。最終年度として、全体のパッケージングを進めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度も新型コロナウイルス感染症の拡大のために、実験実証地への調査や、打ち合わせができなくなるとともに、感染拡大防止の観点から実験室での実験もままならなくなり、実験計画が進められなくなった。次年度使用額は、今年度も実験計画の遅れを取り戻すべく、技能補佐員をアシスタントとして雇用し、 人件費として使用する予定である。
|