研究課題/領域番号 |
19KT0015
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
黒田 恭平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (50783213)
|
研究分担者 |
成廣 隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (20421844)
幡本 将史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20524185)
延 優 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (40805644)
牧 慎也 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (80413855)
野口 太郎 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90615866)
|
研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2022-03-31
|
キーワード | 病害虫防除 / 自活線虫 / バチルス / メタゲノム解析 / 次世代生物防除技術 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は,世界で1,000億USドルもの損害を引き起こしている植物寄生性線虫の化学農薬に依らない次世代生物防除技術を開発することで防除することとし,「何故,バチルス・自活線虫が植物寄生性線虫による被害を抑制できるのか?」という問い(仮説)についてその防除機序を学術的に解明する。 バチルス等による防除機構の解明では、土壌改良資材に優占する微生物の分離株の培養液を用いて植物寄生性線虫(Hirschmanniella diversa)の制運動性試験を行った結果、3株(2株のBacillales目と1株のPseudoxanthomonas)で制運動性効果が得られた。現在、培養液中のタンパク質や代謝産物を分離し、組精製物質の制運動性試験を実施している。 バチルス・自活線虫による防除機構の解明では、バチルス・自活線虫を優占化させた土壌改良資材を用いたカンショの栽培試験において、植物寄生性線虫(Meloidogyne incognita)やネコブセンチュウ密度と負の相関のあるバクテリア、捕食性線虫や雑食性線虫を同定した。 バチルス・自活線虫を優占化させた土壌改良資材のメタゲノム解析を行ない、71個の高品質なドラフトゲノムを構築し、これらゲノム情報から、優占微生物が植物寄生性線虫のクチクラ層を分解可能なプロテアーゼや未知の非リボゾーム型ペプチド合成酵素等を有していることも明らかにした。 レンコン黒皮線虫病を対象とし、その黒点発生のメカニズムの解明を行った。結果、SEM/EDS分析、ICP分析によりレンコン黒点の構成物質を明らかにすることができた。加えて、GC-TOF-MS分析によりレンコン黒点形成時には生理活性物質が黒点近傍に存在することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は研究実施計画に従い、Bacillales目細菌の産生する物質が植物寄生性線虫の運動性を抑制することを明らかにした。また、バチルス・自活線虫を優占化させた土壌改良資材を用いたカンショの栽培試験において、植物寄生性線虫やその被害度と負の相関のある捕食性線虫や雑食性線虫を同定した。この土壌改良資材に存在するバクテリアのメタゲノム解析も実施し、これら微生物群が植物寄生性線虫のクチクラ層を分解可能なプロテアーゼや未知の非リボゾーム型ペプチド合成酵素等を有していることも明らかにしている。また、植物寄生性線虫が作物を加害した際の病害発生や植物体自体の防除メカニズムの解明も進めている。以上の点から、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究計画に従い、Bacillales目細菌が生産する植物寄生性線虫へ効果を示す細胞外分泌酵素を同定すると共に、その防除メカニズムを明らかにする。加えて、その他の微生物や捕食性線虫、雑食性線虫が植物寄生性線虫害を防除するメカニズムを培養・遺伝子レベルで明らかにする。得られた成果を取りまとめ、化学農薬に依らない新たな防除技術の基礎的知見を世間に公表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は新型コロナウイルスの影響で予定していた学会発表、打ち合わせ、植物体の化学分析、メタゲノム解析と組み換えタンパク質の作製を実施することができなかった。そのため、未使用額は次年度の学会発表、打ち合わせ、メタゲノム解析と組み換えタンパク質の作製に充てることとする。
|