研究課題/領域番号 |
19KT0016
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
高橋 有 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源センター, 主任研究員 (70726273)
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研究分担者 |
坂井 寛章 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 高度解析センター, 主任研究員 (20455322)
友岡 憲彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源センター, 再雇用職員 (40373253)
山田 哲也 北海道大学, 農学研究院, 講師 (70374618)
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研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2022-03-31
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キーワード | 野生種 / 栽培化 / マメ科 / 非休眠性 / 難裂莢性 |
研究実績の概要 |
本研究のねらいは、作物にストレス耐性を与えるという従来の発想を逆転させ、野生種に栽培化形質を与えることで新たなストレス耐性作物を開発することである。 今年度、我々は野生種の栽培化が可能であることを実証する論文を採録させた。耐虫性に優れるマメ科野生種ハネアズキの変異原処理集団から、栽培化に最も重要である非休眠性と難裂莢性に関わる変異体を複数選抜したのである。マメ科野生種の種子は非透水性による物理的休眠を示すが、選抜した3つの非休眠変異体はそれぞれ種子の「臍」「レンズ」「マイクロパイル」から吸水できるようになっていた。このうち臍から吸水する変異体と野生型の雑種第2世代におけるバルクシーケンスに基づくMutMap解析により、原因遺伝子候補としてセルロース合成に関わるCESA7ホモログを選出した。一方、難裂莢変異体は莢縫合部離層の消失により難裂莢性を獲得したと考えられた。 また、難裂莢変異体に加えて、新たに選抜した大型化変異体とそれぞれ野生型の雑種第2世代におけるバルクシーケンスを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の開始初年度から、本研究課題の基礎となる「野生種の栽培化」が実現可能であることを示す論文が採録されたことから「おおむね順調に進展している」と判断した。また、当初の予定通り、非休眠変異体・難裂莢変異体・大型化変異体とそれぞれ野生型の雑種第2世代におけるバルクシーケンスを終了した。
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今後の研究の推進方策 |
まずハネアズキにおける染色体レベルのゲノム配列を構築する。現在のハネアズキのリファレンス配列のように、1染色体あたりコンティグ数が多いと、バルクシーケンスに基づくMutMap解析を実施する際に、染色体の位置に応じたSNPインデックスの連続的変化が捉えられないためである。そこで、パシフィック・バイオサイエンス社が開発したHiFi技術に加え、RAD-seq解析に基づく高密度連鎖地図を用いて、ハネアズキにおける染色体レベルのゲノム配列を構築する。 構築した染色体レベルのゲノム配列をリファレンスとして、非休眠変異体・難裂莢変異体・大型化変異体とそれぞれ野生型の雑種第2世代におけるバルクシーケンスデータをMutMap解析することで、それぞれ変異体の原因遺伝子候補を選び出す。 そのうちまずは、すでに非休眠変異体の原因遺伝子候補として選出したCESA7ホモログの遺伝子機能を証明する。ゲノム編集技術を用いてアズキのCESA7ホモログを機能欠損させることで、アズキが臍からの吸水性を獲得するかを判定する。アズキは栽培化の過程で非休眠性を獲得しているが、その非休眠性はレンズからの吸水に起因するため本実験系は成立すると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、バルクシーケンスに必要なプラットフォームを変更したことに加え、外部人的資源の投入により軽質転換系の構築に必要な費用を抑えられたことによる。次年度使用額はリファレンス配列の高精度化を目指したゲノム解読と高密度連鎖地図の作成および軽質転換を容易にするDNA合成およびキット購入に使用する。
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