研究課題
今年度は、昨年度検討したケーススタディに基づき、以下の知見を得た。第1に、オクトパスモデルを適用してエシカルビジネスの実態を把握する上で、「財務・製造・知的・人的」資本は、評価指標として設定しやすいが、「社会・関係資本」や「自然資本」は、ステークホルダーに対して農業の本来のあるべき姿(=倫理的に善いもの)を評価する指標として定量化しやすい面と関係性などの定量化し難い面もあり、包括的な評価指標として用いることが重要である。そのため、農業経営本来の規範的、倫理的な経営活動である農業の持続性を担保する活動であることを客観的に示す指標が必要であることが明らかになった。第2に、エシカルフードチェーンアプローチについては、エシカル的観点による農福FCを「地域の活性化や雇用の創出などを含む人や社会、環境に配慮して、川上(生産)・川中(加工・流通)・川下(小売)で事業活動を行う農業者・食品産業者等の連携」と規定することとした。この観点から見る限りは、①地域の農業者(農家)との強い信頼関係の元での連携②加工事業による農家所得の向上③人への配慮として従事者のQOLの向上への高い意識④消費者の評価等―農福連携が「エシカル的」フードチェーンとして成立しているを明らかにした。第3に、これまでの分析結果から本研究においても、「エシカル消費」の意味を知らない消費者が多いという結果が得られたが、「エシカル消費」という用語を知らない消費者も,具体的な社会問題に対する配慮からエシカル商品を購入していると考えられる。特に、女性かつ高齢者は、「エシカル消費」を知らないでエシカル商品を購入していることが分かった。以上のように「エシカル消費」認証ラベルが添付され目に見える形でのエシカル商品の普及により、従来品に加え、新たにその他のエシカル商品も知ることで選択の幅が広がりという意味でも認知度を高めることは必要である。
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食農と環境(論文特集号)
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