研究課題/領域番号 |
19KT0019
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松下 一之 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (90344994)
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研究分担者 |
鈴木 哲朗 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00250184)
末岡 榮三朗 佐賀大学, 医学部, 教授 (00270603)
島井 健一郎 千葉大学, 医学部附属病院, 特任講師 (10619729)
前川 真人 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20190291)
武藤 学 京都大学, 医学研究科, 教授 (40360698)
荻島 創一 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (40447496)
古川 泰司 帝京大学, 医学部, 教授 (70276731)
吉田 雅幸 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 教授 (80282771)
竹内 公一 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (80326842)
西村 基 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (80400969)
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研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2023-03-31
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キーワード | 医療ビッグデータ / がん遺伝子パネル検査 / クライアント・サーバー方式 / 分散型システム / 地域医療 / ブロックチェーン / スマートコントラクト / トラスト(信頼関係) |
研究実績の概要 |
本研究では主として今後のわが国に重要な医療ビッグデータの取扱いが円滑かつ低コストで行えるようにするための課題を明らかにする。具体的には、がん遺伝子パネル検査の情報ネットワークを形成している病院間で、ダミーデータを用いてクライアント・サーバー方式(中央管理システム)と分散システム方式のハイブリッド型の情報共有の方法を検討する(例えば患者同意書の取得の倫理、スマートコントラクトの証拠能力、アクセス記録の保存、個人情報保護の方法等)。そのために情報の品質、保守・運用性、コスト・公益性の4つを適切に評価する。社会におけるトラスト(信頼関係)の確立は世界的にも様々なシステムが模索されている。現在、医療情報は主にクライアント・サーバー型(以下中央集約型)と分散システム型(以下分散型)の2つの方法でデータベース化され利活用されている。本研究では、中央集約型と分散型の併用による医療情報共有の方法として、ブロックチェーンとスマートコントラクトを組み合わせたデータベース管理の方法を提案し、そのためのトラスト(信頼関係)の評価法を検討する。 社会におけるトラスト(信頼関係)の確立は世界的にも様々なシステムが模索されている。現在、医療情報は主にクライアント・サーバー型(以下中央集約型)と分散型システム(以下分散型)の2つの方法でデータベース化され利活用されている。本研究では、中央集約型と分散型の併用による医療情報共有の方法として、ブロックチェーンとスマートコントラクトを組み合わせたデータベース管理の方法を提案し、そのためのトラスト(信頼関係)の評価法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がんゲノム医療や地域診療連携での医療ビッグデータ情報を共有する方法について、本研究用にダミーの医療情報を用意して、患者の視点から患者本人が診療情報を個人のスマートフォンなどにダウンロードして医師や医療関係者間で共有する分散型の医療情報共有システムを検討した。現在用いられているナショナルデータベース等にみられるセキュアな中央集約型のシステムとは別に、一つの試みとしてブロックチェーンを併用した分散型の医療情報共有の新しいシステムをPOCとして開発した。具体的にはブロックチェーンのプロトコール、ハードウェア技術、アプリケーション開発を活用した、患者の診療データを医療者との間で所有・共有する仕組みとなることが十分に期待される(千葉大学病院と株式会社レシカとの共同開発)。本アプリケーション開発の目的は、第一義的には現在すでに使用されている既存のオンライン診療の補助ツール(患者の高度な医療や画像、家系図、ゲノム・遺伝情報などの共有)を目指している。既存の方法では困難な高度な個人情報を共有するための全く新しいツールの研究開発であり、スマートフォン端末を用いることにより、将来的にはDoctor to Patient, Patient to Doctorの情報共有が促進されることが期待される。 ブロックチェーンを用いた分散型の医療情報共有方法や当院および千葉県における遠隔医療(およびオンライン診療)の現状にも対応可能と考えている。さらに、臨床検査の視点を踏まえて検査データの標準化、共用基準範囲、臨床判断値の病院間の情報共有など、今後の課題についても検討した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の成果を、実際の地域医療に応用する動きも始まっている。本研究を開始した2020年頃から新型コロナウイルスの世界的な流行が始まった。日本でも、感染状況の拡大にともなってオンライン診療などの病院への導入が議論されるようになった。2021年の10月頃より、本格的なオンライン診療の導入のための準備が千葉大学医学部附属病院でも開始された。2022年の1月にはいり、保険収載により検査データの標準化が議論されるようになっており、オンライン診療では特に「検査、処方、病名」の3項目は、最も標準化が必要である。地域医療における検査データの共有には標準化が必要であるが、臨床検査データの標準化は一般に遅れている。近年の大きな動きの一つに「データヘルス改革」があり、米国などを中心にHL7 FHIRという国際標準による基盤で、EHR(electric health record)・PHR(personal health record)の相互連携を目指しており、2020年頃から「データヘルス集中改革プラン」が国策として動いている。このように、検査結果の共有は、旧来の地域医療連携システムのような「他病院DBを閲覧する」phaseから、「データ流通による利活用」が必要なphaseとなり、検査データの標準化(JLAC10付与)が必要となっている。 今後の本研究では、近未来の千葉県のより良い医療情報の共有のために必要な臨床検査データの標準化(共用基準範囲の必要性)の医療実装を関係部署と協働しながら進めていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延等により、研究会などの開催が一部で延期となったため。
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