研究課題/領域番号 |
19KT0023
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橘 亮輔 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (50610929)
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研究分担者 |
柳原 真 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任助教 (60392156)
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研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2022-03-31
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キーワード | 社会結合 / 鳴き交わし / 社会報酬 |
研究実績の概要 |
本研究は、声の掛け合いによって社会的結合が促進するかとその神経基盤を調べることを目的する。これはダンバーの「音声グルーミング仮説」に基づいているが、これまで相関関係しか調べられてこなかったことに対し、因果的な関係性を実験的に実証しようとするものである。この実験を可能にするには、人のように音声コミュニケーションを非常に頻繁に行い、また神経活動計測が可能な対象が必要である。さらに実験的介入のためにはその音声と制御機構についてよく知られていることが望ましい。そこで、鳴き交わしを頻繁に行い、かつ、音声コミュニケーションの行動神経科学研究の蓄積がある鳴禽、特にキンカチョウとジュウシマツを対象としている。 2020年度は、引き続き行動実験を中心に推進した。窓がついた壁で仕切られた対面ケージを作成し、それぞれの側に鳥を置いて鳴き交わし行動を観察した。まず、時間経過にともない鳴き交わし頻度が上昇すること、鳥ペアによって鳴き返し潜時が異なることが確認された。また、相手を視認できることを社会的報酬として、手がかりとしてLEDと音を経時的に呈示し、呈示音に対して発声すると報酬が得られる実験を行った。その結果、手がかりに応じて発声頻度の増減が見られた。このことは、社会報酬による発声条件づけが可能であることを示している。この実験について第80回日本動物心理学会大会にて発表した。また、本研究の基礎となる鳴禽の発声とその神経メカニズムに関する論文を複数出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はCOVID-19対策により、研究室への立ち入りを1/3程度に制限した。そのため、自動化した行動実験に注力し、毎日の作業と注意を必要とする神経活動記録は行わなかった。また、集団で計測するための装置の作成と技術をあらかじめ習得するため、開発者のHahnloser教授(ETH Zurich)の研究室に滞在する予定であったが、海外渡航が取りやめとなってしまい遂行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も新型コロナウイルスのワクチン接種をうけるまでは、2020年度と同様の状況にならざるを得ない。秋以降にまとめて海外滞在および神経活動記録を遂行できることを期待し準備を進める。できなければさらに数種類の行動実験を組み合わせることで、鳴き返しに対する期待と選好を計測できるよう計画していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はCOVID-19対策により、研究室への立ち入りを1/3程度に制限した。そのため、自動化した行動実験に注力し、毎日の作業と注意を必要とする神経活動記録は行わなかった。また、集団で計測するための装置の作成と技術をあらかじめ習得するため、開発者のHahnloser教授(ETH Zurich)の研究室に滞在する予定であったが、海外渡航が取りやめとなってしまい遂行できなかった。次年度使用額は、ワクチン接種など対策により長時間の研究室滞在や国外滞在が可能になった段階で執行する。
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