研究課題/領域番号 |
19KT0024
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 大地 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任助教 (00724486)
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研究分担者 |
岡田 猛 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (70281061)
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研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2022-03-31
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キーワード | 演者間協調 / 同期 / 上演芸術 / ダンス / 非線形時系列解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、義務教育において必修化されたダンス表現を対象とし、複数名の演者に生じる協調の様相と、以上の協調により生じる演者間の関係性の変化を検討する。その際、要因設定や測定が比較的容易である実験室でまず検証を行い、提案された知見・測定手法を用いて演者が表現を行うフィールドを対象とした検証を行う。特に本年度では、実験室において熟達者に即興的な表現をペア条件(領域で頻繁に行われるバトル場面)で披露してもらい、その際の演者間の協調関係を検証した。ここでは先行研究で有効性が示唆されたダンス表現時の空間内の移動(清水・岡田,2017)や全身のリズム運動(Miura et al., 2011)といった単純な表現媒体における振る舞いをモーションキャプチャーで測定し、指標として用いた。以上の指標について非線形時系列解析手法(位相解析)を適用し、両ダンサーの協調関係やその時間経過・文脈変化による動的変化を定量的に抽出した。また、人同士の振る舞いは偶然に合致してしまう可能性が示唆されている(e.g., Bernieri e al., 1988)。そのため、実際にバトルを行ったペア条件とペア条件のダンサーをシャッフルして組み合わせた仮ペア条件とを比較し、関わり合いによって生じた演者間協調を抽出した。結果として、上記の表現媒体において演者間に逆位相同期に相当する興味深い演者間協調が見られること、その協調の様相が時間経過等により動的に変化すること、が現在のところ示唆されている。現在以上の研究知見については、関連する学会・研究会で発表予定であり、論文執筆も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究実績の概要に記載した通り、当初予定していた実験については既に実施している。また以上の実験からは当初予定していたよりも興味深い演者間協調の様相が確認されており、新規な知見を示す結果が確認されている。以上のことから当初予定していた本年度の計画は、十分に達成されたと考えられた。また下記の通り次年度については、当初予定していた計画に加え、上記の知見から推測されたより興味深い仮説を検討する実験も行い、さらなる計画の推進に努めることを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に記した通り、まずは当初予定していた空間内の移動やリズム運動に加えた表情等のより多様な表現媒体に着目した検討と、現実にダンサーが表現を営むフィールド場面を対象とした検討を行う予定である。以上に加え、可能であれば、本年度に示唆された文脈による演者間協調の様相の変化を検証する。例えば、パフォーマンスの実施前・実施後における演者間協調とパフォーマンス中の演者間協調との比較や、複数チームで表現(バトル場面)に取り組む際のチーム内(協働的な文脈)・チーム間(競争的な文脈)における演者間協調の比較を行うことで、文脈が演者間協調に与える影響を定量的に検証することを予定している。以上の計画等を可能であれば加えることで、さらなる研究の推進に努める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後の研究の推進方策等に記した通り、次年度以降はフィールド場面における測定に加え、より対象とする人数を拡張したモーションキャプチャー等を利用した実験・定量的測定を行っていくことを予定している。これらの測定においては、ビデオカメラ・モーションキャプチャーカメラ等の機器の追加や、発展した解析を行うための専用のソフトウェア等の追加が必要となる。また上記の測定を行う際の熟達者への謝金も必要となる。以上の事情により次年度で新たに購入するものや参加者謝金が必要となったため、次年度使用額が生じた。なお次年度購入予定のものに関しては、次年度以降も継続してフィールドワーク・実験に利用していくことを予定している。
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