研究課題/領域番号 |
19KT0025
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
小田 淳一 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (10177230)
|
研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2022-03-31
|
キーワード | オラリティ / 民話 / レユニオン / クレオル |
研究実績の概要 |
インド洋西域のレユニオン島においてこれまで現地調査で採取した,職業的語り手によるレユニオン・クレオル語の民話音源とテキストの精査を継続し,オラリティに特有と思われるテキスト上の様々な表現に加え,映像資料から民話の口演に特徴的な身体的表現の抽出を行った。また音源や映像から,語り手と聴き手の間の相互コミュニケーションと捉え得る場面の抽出と類型化を行った。 次いで抽出された様々な表現の分類を行うために,本研究で構築を予定している「クレオル民話オラリティ・オントロジー」の基本的な構成要素として,グループμが『一般修辞学』(1970)で示した文彩体系に含まれる修辞的表現を,オントロジー・エディタprotege(version 5.5.0)を用いてオントロジー化した。またオントロジー化の過程で得られた,オントロジー構築の際の技術的な問題について別種のデータを用いて検討を行い,2021年3月20日(土)に千葉大学で開催された人工知能学会ことば工学研究会第65回研究会において「カート・オントロジー構築の試み」というタイトルで報告を行った(大坪玲子と共著)。 さらに,これまでレユニオン島で行ってきた民話の採取調査を通して知り得た,語り手の民話の実践や関連する活動について,現地社会の基盤を成すクレオル性に特有であると思われる諸事情を,東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所発行の『FIELDPLUS』26号(2021年7月刊行予定)に「混成の小宇宙2000-2019」(pp. 20-22)というタイトルで寄稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
採取した民話のテキストや音源,映像からオラリティ特有の表現を抽出する作業は継続して行っているが,今年度当初に予定していた,レユニオン・クレオル民話における民俗語彙や定型表現に関する現地調査はCovid-19が調査地域でも流行していたため実施することができなかった。一方,「クレオル民話オラリティ・オントロジー」の構築については,基礎的なデータ構成を終えたことから,実際にテキストや映像から具体的な表現を事例として入力する準備が可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
「クレオル民話オラリティ・オントロジー」の構築作業を進め,オラリティ特有の表現に関する概念体系の木構造と共に,テキストや映像の表層に顕現する個別的事例の組み込みを行う。また,個々の民話におけるオントロジー要素をネットワーク構造で可視化し,要素群の結合過程の分析からその模倣的再現モデルの構築を試みて,現地の語り手にフィードバックして評価を得る。調査地域におけるCovid-19の流行が収束しない場合には,レユニオン・クレオル民話における民俗語彙や定型表現に関する現地調査や再現モデルの評価は保留し,翌年度に繰越申請する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の流行により,今年度当初に予定していた,レユニオン・クレオル民話における民俗語彙や定型表現に関する現地調査を行うための旅費が執行できなかったために次年度使用が生じた。次年度中にCovid-19の流行が収まった場合,改めてそれらの調査及び,民話構造の再現モデルの評価を語り手にフィードバックするための旅費として使用する。
|