本研究は、自己語りが歴史性を含み、集合的な共有で歴史化への契機となること、オラリティのもつ交話機能がコミュニティ再生へ果たす役割を具体的に描き出した点において社会学的意義がある。地域コミュニティにおけるオラリティの有効性の解明はオーラルヒストリーの社会学的研究にとって新たな成果となった。東日本大震災・原発事故後の地域荒廃という厳しい困難を抱える地域におけるオーラル・コミュニケーションを通して人びとの繋がりを回復しコミュニティ再形成をめざす活動は、現代日本の地方社会に共通する過疎化や高齢化、災害による困難等のなかで地域に生きる人たちにも共有される問題の探究として汎用性のある社会的意義がある。
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