研究課題/領域番号 |
19KT0028
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
石田 喜美 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (00612996) [辞退]
加藤 浩平 東京学芸大学, 教育学研究科, 研究員 (20812481)
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研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2022-03-31
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キーワード | Larp / Simulated Co-Presence / 疑似共在性 / Transcultural Learning / 文化的越境学習 / Immersion (没入感) / "Other" ("他者") / Autism Spectrum Disorder |
研究実績の概要 |
今年度は、自閉スペクトラム症(ASD)の診断のある当事者の生活世界に関する文献調査とデータ収集に焦点を当て、今後のデザインの強固な基盤を作成した。また、本課題に関連する研究をさまざまな国際会議等で発表し、デザイン研修会に参加した。しかしながら、COVID-19の感染拡大により、年度末に予定されていた国際研究会を中止せざるを得なくなった。研究分担者の1人がプロジェクトを離れた。 まず、ASDの人々が直面している問題と、それらがどのように誤解されているか、および過去に何らかの形の治療が害を与えているものについて、先行研究を集中的に調査した。これは、感覚過敏・感覚鈍麻や神経学的定型(NT)の人によるASDという神経学的少数派への誤解やASD者がNTの社会の中で受けている体験等を特定するのに役立った。これら調査結果は、本課題のロールプレイ(LARP)の中に取り入れていく。 続いて、文献調査で得た情報は、ASDと診断された情報提供者への定性的なインタビュー調査でも実証ができた。ドイツ人1名、日本人2名のASD当事者からは、デザインをさらに支援することに同意を得た。これは、ステレオタイプ的な表現に対する保護手段として機能する。 収集データに基づいて、ゲーム用ツールを調査し、当事者の経験をどのようにLARPに変換する方法の検討を進めた。そのため、2019年度のMittelPunkt LARP学会とLARP作者研修会に参加した(ドイツ)。熟練のLARPデザイナーからツール、アドバイスについて情報収集ができた。しかし、年度末のNPO Waldritterとの国際研究会は、COVID-19の発生により中止・延期された。 なお、この研究は、日本で開催されたDiGRA 2019国際会議でも発表され、議論された。本研究課題とその重要なアイデアは、『作業科学研究』と『RPG学研究』で研究論文として掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
チームはデータ収集フェーズで非常に良い進捗を遂げ、LARPに含める必要のある基本経験と問題を特定した。プロのLARPデザイナーとの交流により、これらの問題を疑似共在性体験に現実的に変換するために、可能なゲームメカニクスについての情報やノウハウが大量に提供された。 しかし、今年度の取り組みの集大成である2020年3月に予定していた「Mechaniken zur und Grenzen beim Aufloesen von Realitaet」(レアリティを解くためのメカニズムとその倫理的な境界)という国際研究会(ワークショップ)は中止せざるを得なかった。ここでは、研究代表者と研究分担者がNPO Waldritterの研究協力者と集まり、ゲームの仕組みを実際に調査し、LARPの物語枠組み(narrative frame)について話し合い、LARPの倫理的考慮事項(参加者の否定的な感情など)に焦点を当てる予定であった。ワークショップの代わりに、研究代表者は複数名の研究協力者と会い、基本的な調査結果を伝え、封鎖措置中にどのように進めるかについて相談した。それでも、ワークショップの中止、または延期により、本研究はおよそ予定より2ヶ月遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の感染拡大によるロックダウンで、特に国際航空旅行の制限が起きている状況は、2020年度に計画された手順を非常困難にしている。Waldritterの研究協力者は、元の研究計画に従ってLARPデザインとテストプレイセッションのために日本に来る予定であった。しかし3月のワークショップと同様に、このような措置はすべて保留されており、今年それらを実現できるかどうかは不明である。 現在、ワークショップを2020年の初夏に開催されるオンラインビデオ会議に変更することを計画している。その後、すべての研究者と研究協力者が、オンラインコラボレーションツールを使用して、物語枠組みの開発を進める。小規模のテストプレイも検討中である。 現実的には、すべての出張および実用的なデザインのテストは2021年度に延期される必要があると予測している。したがって、2020年の予算の多くはプロジェクトの3年目に振り向ける必要があると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の拡大により、2020年3月に予定されていたドイツで国際ワークショップを中止せざるを得なくなり、計画とおり旅費を使用できなった。2020年度中に国際旅行がまた可能になることを期待し、使えなかった2019年度の予算でドイツ研究協力者を日本に呼び、ここで国際ワークショップとデザインするLARPのテストプレイを行う予定である。
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