今後の研究の推進方策 |
2021年度が本科研費の最終年度であるが、昨今の世情を鑑み、大学内での研究、圃場試験に注力したい。現在のところ、醸造過程で発生した果皮よりジャスモン酸の葉内の蓄積量を上昇させうる化合物として数種単離している。単一の化合部においても本作用の検証は続けるが、相乗効果を想定して、得られた化合物の混合溶液についても検証したい。また、得られた化合物は醸造用ブドウの品種改良などに利用可能な野生種のヤマブドウの未熟果実にも大量に含まれていることが知られていることから、野生種の未熟果実にも範囲を広げ、生理活性物質の単離精製を行いたい。3,4,5-trihydroxybenzoic acid、ethyl 3,4,5-trihydroxybenzoate、および2-(3,4-dihydroxyphenyl)-3,5-dihydroxychroman-7-yl 3,4,5-trihydroxybenzoateなどの没食子酸類の取得が予想されるが、葉面散布によるジャスモン酸類の内生量の効果に関する知見はない。本試験により、ヤマブドウの利用方法が発見できれば、品種改良のための個体維持を継続しながらも、当該植物の有効利用法が明らかにできると期待している。 圃場実験に関しては、2020年度と同様な作付け量(3区画の試験区として、1区画あたり60株)で再度試験を行う。品種は例年どおり、ダンシャクとして、作期の3回に渡って、醸造過程で発生した皮の熱水抽出物(1kg果皮/1L)の葉面散布を行う。本年度も増収効果が確認できれば、5年間の5回にわたる試験で、4回有用性を示すことになり、有用性を主張する上での好材料となる。
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