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2020 年度 実施状況報告書

新たな農資源としての醸造後の酵母資源の利用とその生理活性発現機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19KT0031
研究機関北海道大学

研究代表者

松浦 英幸  北海道大学, 農学研究院, 教授 (20344492)

研究分担者 柏木 純一  北海道大学, 農学研究院, 講師 (60532455)
研究期間 (年度) 2019-07-17 – 2022-03-31
キーワード未利用資源 / ワイン醸造 / 種子残渣
研究実績の概要

地球上の埋蔵エネルギーには限りがあり、未利用バイオマス資源の有効活用は人類永続の一助となる。本資源の有効活用の観点から、これらを原料とした多く農業資材が市販され、利用されている。しかし、学術的な裏付けが乏しく、その使用が一部に限られている。大量に産出される未利用バイオマスの一事例として、ビール、日本酒、ブドウ酒、焼酎などの醸造過程の副産物である澱(おり)があげられる。本課題では酒醸造後の酵母澱に焦点を当て資源循環型の社会構築に向けた研究事例のモデルケースを構築する学術的基礎研究を行う。2019年度において、ワイン醸造後の果皮に有用な活性を見出し、2020年度では昨今の世情により、ワイン醸造後の果皮について、本大学の研究や圃場試験に注力した。ワイン醸造後の果皮について、『なんらかの刺激によりJAの蓄積を促進できればバレイショ塊茎の収量増加が望める』の仮説のもと、生理活性化合物の探索を行い、2019年度で単離したカテキン類、(-)-epicatechinと(+)-catechinとは構造の異なる化合物の単離に成功した。また、圃場実験に関しては、2017年度から毎年、農学部実験圃場にてバレイショ(男爵)を育成し、醸造過程で発生した皮の熱水抽出物(1kg果皮/1L)の葉面散布試験を3区画(1区画あたり30株を設定し行ってきた。今年度は葉面散布によるバレイショ増収効果に確証を得るために圃場面積をほぼ2倍として行い、増収効果を確認した。よって、2021年度においても、果皮の熱水抽出物(1kg果皮/1L)の葉面散布の有用効果の再現性をさらに高めるため、同様な規模で試験を行う運びとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨今の世情で、大学での試験のみとなったことは残念なところであったが、さらなる生理活性物質の単離に成功していることと、試験圃場の規模をほぼ2倍にして、収量調査を実施でき、増収効果が得られた点では研究の進捗があった。以下に進捗状況をまとめる。醸造過程で発生した皮の熱水抽出物からの生理活性物質の単離生成に関しては本年度、トリテルペンに属する有機酸を単離生成できた。葉面散布試験に供する量を確保するために、さらに出発原料を大量に処理し精製を行なっている。想定される作用として、単離できた当該の化合物は病原菌の細胞壁の類縁体であることから、葉面散布により、化合物が葉面に接触することで、病原菌の襲来と植物が勘違いしているのではないかとの作業仮説に至った。試験圃場に関してはほぼ例年通りの作付けの期日に合わせた。2018年度は春先から夏にかけて続いた低温のために、試験結果が芳しくなかったが、幸いにして、2020年度は比較的穏やかで試験を行うには満足な天候であった。この条件下のもと、醸造過程で発生した皮の熱水抽出物(1kg果皮/1L)の葉面散布試験を3区画(1区画あたり60株、通常の年の2倍の作付け)で行い、市場に出回る大きさの馬鈴薯に関してはほぼ10%程度の増収効果を確認している。

今後の研究の推進方策

2021年度が本科研費の最終年度であるが、昨今の世情を鑑み、大学内での研究、圃場試験に注力したい。現在のところ、醸造過程で発生した果皮よりジャスモン酸の葉内の蓄積量を上昇させうる化合物として数種単離している。単一の化合部においても本作用の検証は続けるが、相乗効果を想定して、得られた化合物の混合溶液についても検証したい。また、得られた化合物は醸造用ブドウの品種改良などに利用可能な野生種のヤマブドウの未熟果実にも大量に含まれていることが知られていることから、野生種の未熟果実にも範囲を広げ、生理活性物質の単離精製を行いたい。3,4,5-trihydroxybenzoic acid、ethyl 3,4,5-trihydroxybenzoate、および2-(3,4-dihydroxyphenyl)-3,5-dihydroxychroman-7-yl 3,4,5-trihydroxybenzoateなどの没食子酸類の取得が予想されるが、葉面散布によるジャスモン酸類の内生量の効果に関する知見はない。本試験により、ヤマブドウの利用方法が発見できれば、品種改良のための個体維持を継続しながらも、当該植物の有効利用法が明らかにできると期待している。
圃場実験に関しては、2020年度と同様な作付け量(3区画の試験区として、1区画あたり60株)で再度試験を行う。品種は例年どおり、ダンシャクとして、作期の3回に渡って、醸造過程で発生した皮の熱水抽出物(1kg果皮/1L)の葉面散布を行う。本年度も増収効果が確認できれば、5年間の5回にわたる試験で、4回有用性を示すことになり、有用性を主張する上での好材料となる。

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公開日: 2021-12-27  

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