農業、林業、水産業、畜産業におけるほぼすべての農資源において、短期的な生産性や収益性が重視され、一方の方向にエネルギーが流れる画一的な農資源の利用がまかり通っている。身近な事例として日本人の主食とするコメでは稲藁、籾殻、米糠があげられ、毎年、大量に産出されるにも関わらず、潜在するエネルギーの再回収は活発でない。環境負荷が少ないと評価されているバイオエタノールでさえ、その主たる原料となるトウモロコシの子実部はエネルギーとして変換されるが、有用物質を含む芯は廃棄されている。これらの現状を鑑み、更には地球上の埋蔵エネルギーには限りがあることから、再利用できる部位は再利用する資源循環型の社会構築は持続的な社会を目指すうえで必須の項目である。本課題では、大量に産出される醸造過程の副産物の有効利用を模索する。具体的な副産物の利用法として、バレイショ栽培における葉面散布剤としての用途を視野に入れ、『バレイショ塊茎の増収効果』を実証する。圃場実験の散布回数に関しては、実際の農家が年間に行える施与回数を考慮しつつ行った。上記の効果のメカニズムは醸造過程の副産物資材の葉面散布により、植物が醸造過程の副産物に含まれる何らかの成分を病原菌の襲来と勘違いし、地上部でJA類縁体の生合成量が上昇し、蓄積したJA類縁体が地下部へ移動して上記の効果が発揮されると想定している。本課題では醸造過程の副産物資材として、ビール醸造後のビール酵母、ワイン醸造後のブドウ種子、皮、澱を資材として用いた。その結果、ワイン醸造後に絞りかすとして発生する皮の熱水抽出物にバレイショ塊茎の増収効果を見出した。
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