研究課題/領域番号 |
19KT0032
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
田村 孝浩 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (20341729)
|
研究分担者 |
松井 正実 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10603425)
武山 絵美 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (90363259)
|
研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2023-03-31
|
キーワード | 農作業安全 / 農作業事故 / 対面調査 / 法令・社会制度 |
研究実績の概要 |
水田と畑で起きた農作業事故の発生プロセスを,事故発生前・事故発生時・事故後の観点から紐解いて,事故の発生傾向と特徴を明らかにした。共済金支払いデータをもとに分析した結果,次のことが明らかとなった。 1)水田と畑における農作業中の事故1,225件のうち全体の9割は物損事故であり,発生場所の9割は畑であり,事故時の使用機械はトラクタとコンバインの2機種で全体の9割を占めていた。また物損事故と人身事故における平均損害額を定量的に比較した結果,人身事故のほうが相対的に高い値を示した。 2)水田と畑で発生する事故は「耕うん・整地中」,「収穫」,「走行中」の順に多く,この3作業で物損事故全体の約6割を占めていることを明らかにした。事故原因については「接触・衝突」と「異物巻き込み」の2要因が物損事故全体の8割を占めていることを明らかにした。また物損事故全体の9割は単独損害であり,農業用車両あるいは静止物に損害を与えた事故が物損事故全体の8割を占めていた。なお損害を受けた静止物の8割は「給水・排水設備」と「壁」であった。 3)水田と畑において頻発する物損事故の作業内容と発生形態を明らかにした。具体的に,耕うん・整地中に農業用車両が静止物に接触・衝突するもので,物損事故全体の17%を占めた。また農業用車両と静止物との接触・衝突事故は,農業用車両単独による接触・衝突事故の約4倍,物損事故全体の30%に相当していた。 4)人身事故や物損事故の一定数において,農業者以外の第三者が損害を被っている実態を明らかにした。これまで農作業事故は農業者固有の問題と捉えられてきたが,実際には農業者のみならず非農家等の第三者にも少なからぬ損害を与えていることを明らかにした。また,農作業事故を削減するための方策として,頻発する事故パターンに対応した圃場整備や注意喚起が重要であることを指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルス感染拡大に伴う渡航制限等により,当初計画していた現地調査を順延せざるをえず,進捗状況に影響を及ぼした。これに伴い,研究期間を延長した。
|
今後の研究の推進方策 |
農作業安全法令に関する海外調査は,新型コロナウィルス蔓延に伴う渡航制限等により今後も変更・調整が必要となる。これまでに順延した調査については,今後の社会情勢を踏まえつつ2022年度に実施する。なお社会情勢により現地調査の実施が困難と判断された場合には,共同研究者と議論のうえ研究計画に大きな変更が生じぬようオンライン形式での調査実施について検討を行い,成果結実を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:コロナウィルス感染拡大に伴い,渡航制限や対面調査の実施が著しく制限され,当初計画していた調査を順延せざるを得なかったため。 使用計画:コロナウィルスの感染状況ならびに世界的な社会情勢を踏まえて,順延した海外調査ならびに対面調査を実施する。実施に際しては,共同研究者と綿密に議論を行い,成果結実に向けた調査・分析を行う。
|