研究課題/領域番号 |
19KT0035
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
池田 善久 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (00735318)
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研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2022-03-31
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キーワード | 沿面放電 / スマ魚卵 / 分子導入法 |
研究実績の概要 |
沿面放電によりスマ魚卵に導入される分子量を評価した。実験方法は、3.5cmディッシュを用いて、魚卵20~30個程度に対し蛍光分子(FITC-Dextran)を混ぜた50 %濃度海水に浸し、沿面放電プラズマを照射した。照射後1時間静置した後、魚卵を洗浄し、100 %海水で更に24時間静置し、孵化した稚魚を蛍光顕微鏡にて観察した。生物学的特性の確認として、細胞期による導入傾向の違いについて評価した。実験の結果、1から16細胞期までは生存率が0となったが、32から128細胞期程度までの初期胚では10 kDaのみ導入され、体節が形成された後期胚では10 kDa、250 kDa、2 MDaの導入を確認した。一般的に後期胚への導入はマイクロインジェクションでも困難とされているた、沿面放電処理だと導入されることが確認された。16細胞期までは卵膜が柔らかく、刺激に対し脆弱である可能性があるため、細胞期によって最適な条件があることが示唆された。 次に電気的特性の確認として、正弦波印加電圧5kVppに対し、ダイオードによる半波整流を行った場合、行わなかった場合の導入効率への影響を比較した。半波整流を行った場合は、極性による違いも比較した。実験の結果、半波整流を行った方が魚卵への分子の導入効率が高いことが確認された。一方で極性による差は確認されなかった。半波整流はどちらかの極性がカットされた半周期分電圧が印加されていない時間が生じる。そのため、処理時間の影響が考えられた。また、放電電流の大きさによって導入率が異なっており、最大導入効率は40 %で、このときの放電電流は70 mAppであった。導入効率の電流依存性を確認したことより、導入機序に電気的要因が影響していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、沿面放電によるスマ魚卵への分子導入について、細胞期による導入傾向特性、導入効率の放電電流依存性を確認した。また導入可能な分子サイズの確認も行い、最大2 MDaまで導入可能であることを確認した。スマ魚卵以外では、メダカの魚卵を用いた実験準備を進め、飼育環境の構築を完了した。これらは当初計画通りに進捗しており、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
メダカ魚卵への分子導入を行う環境が整ったことから、今年度は淡水魚のメダカと海水魚のスマの両方を比較評価することで、導入に寄与している要因の特定を行う予定である。溶液の塩分濃度や卵膜の硬さなど、電気的にインピーダンス変化となり得る要素が異なる2種の魚卵を取り扱うことで、導入に対する電気的作用の解明を進める。また分子の卵膜通過および胚への導入に対して、導入経路が明らかになっておらず、SEMによる魚卵表面および断面の観察等を通じて、導入経路の特定を進めるとともに、具体的な膜輸送機構の解明も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、沿面放電処理によって生じる電気的要因が魚卵への分子導入効率に大きく作用していることを明らかにした。より詳細な解析を行うためには、魚卵および溶液を含めたインピーダンス解析が必要と判断したが、解析に必要な電圧プローブ、電流プローブ、その他計測器に関して、年度内に選定し研究成果を出すには期間が短すぎると判断し、より詳細な解析は翌年に繰り越すこととし、合わせて機器購入費の予算も繰り越すこととした。
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