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2021 年度 実施状況報告書

スマート農業システムの社会的費用便益分析

研究課題

研究課題/領域番号 19KT0037
研究機関早稲田大学

研究代表者

鷲津 明由  早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (60222874)

研究期間 (年度) 2019-07-17 – 2023-03-31
キーワードスマート農業 / 技術マップ
研究実績の概要

デジタル技術を活用したスマート農業の普及について,日本の特徴を明らかにし,スマート農業技術のさらなる普及について考察した。日本農業法人協会の協力を得て,日本の大規模農家のスマート農業の現状についてアンケート調査を実施した。また、製造業の管理技術理論で使用されている評価方法を農業に適用することで,スマート農業カイゼンレベル(SAKL) 技術マップの作成を提案した。SAKL技術マップとは,データの可視化レベルと,普及時期で分類されたスマート農業技術のタイプという2つの評価軸から,個々の農場のスマート化を診断するための仕組みである。アンケート調査の結果を,提案したSAKL技術マップを使用して分析することにより,日本のスマート農業技術の現在の拡大状況を分析した。その結果,データの可視化レベルを上げ、より最新タイプのスマート農業技術を導入することで、日本の農業の生産効率を向上させられることが示唆された。しかし,データの可視化レベルが低くても、最新タイプのスマート農業技術を導入することだけでも、農場の生産効率が上昇する可能性が示唆された。スマート農業技術は,農家の情報リテラシーに依存することなく、情報を自動的に視覚化し、条件を最適化する。日本の大規模農業の現場でも、現在のスマート農業技術の導入率は50%未満である。将来的にスマート農業技術を効果的に普及させるためには、デフォルト設定のもとである程度の生産効率の向上が見込まれるスマート農業技術の標準化されたパッケージの開発を促進する政策が有効と考えられた。このようなパッケージがあれば、農家の情報リテラシーを向上させることなく、スマート農業を拡大することができるだろう。日本の農業現場は、現在、このようなスマート農業技術の標準化されたパッケージの開発に取り組んでいると考えられる。これらの研究成果を英文ジャーナル紙に投稿し,受理された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ影響により,スマート農業の現地調査を実施することがほぼできておらず,その意味では当初の予定を達成できていないものの,アンケート調査結果をまとめる手法として独自のスマート農業カイゼンレベル(SAKL) 技術マップの作成を提案することができ,さらにその結果がジャーナルペーパーにアクセプトされたという点では,当初の計画以上の成果を達成することができた。

今後の研究の推進方策

研究年度を1年間延長し,これまで果たすことができなかったスマート農業の現地調査を可能な限り実施したい。そして各調査先の現状をスマート農業カイゼンレベル(SAKL) 技術マップの視点から評価し,スマート農業の普及実態と今後の普及政策についてより具体的な提言を目指したい。
また,過年度までに実施したアンケート調査結果は大規模農家を対象とするものである一方,数において80%以上を占める中小農家のスマート化については考察が十分とは言えない。中小農家のケースでは,効率改善などの重要評価指標(KPI)では捕捉できない評価軸も存在すると考えられ,それらについてヒアリング調査によって明らかにする予定である。
また,2050年カーボンニュートラル宣言の下,農業現場における再生可能エネルギー利用が欠かせない目標となってきた。しかしそもそも農業では電化が進んでいないほか,日単位のみならず季節単位でエネルギー需要の変動が大きく,負荷平準化のための工夫が再生可能エネルギー導入のために必要な対策となっている。再生可能エネルギーを単に導入するだけでなく有効利用するためには,スマート農業技術の役割が重要と考えられるので,この点についても研究の視野を拡張し,調査を実施していきたい。

次年度使用額が生じた理由

コロナ影響で現地調査が実施できなかったため。
研究期間を1年間延長し,再生可能エネルギーを利用したスマート農業という新たな視点も付け加え,現地調査を実施する。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 5件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] スマート社会の産業構造分析に向けて2022

    • 著者名/発表者名
      鷲津明由
    • 雑誌名

      早稲田社会科学総合研究

      巻: 19(1) ページ: 83-101

  • [雑誌論文] 地域別家庭CO<sub>2</sub>排出量の推定手法の開発:地域別環境政策立案にむけて2022

    • 著者名/発表者名
      鷲津 明由、中野 諭
    • 雑誌名

      エネルギー・資源学会論文誌

      巻: 43 ページ: 15~24

    • DOI

      10.24778/jjser.43.1_15

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 大規模オフィスビルにおけるゼロ・エネルギー・ビルディング対策の浸透状況2022

    • 著者名/発表者名
      鷲津 明由、尾沼 広基、有村 俊秀
    • 雑誌名

      環境科学会誌

      巻: 35 ページ: 19~27

    • DOI

      10.11353/sesj.35.19

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Creation and Application of the 2015 Input-Output Table for Analysis of Next-generation Energy Systems: Analysis of the Effects of Introducing Carbon Tax2022

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Nakano, Ayu Washizu
    • 雑誌名

      RIEEM Discussion Paper Series

      巻: 2103 ページ: 1-25

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] A Study on Energy Tax Reform for Carbon Pricing Using an Input-Output Table for the Analysis of a Next-Generation Energy System2022

    • 著者名/発表者名
      Nakano Satoshi、Washizu Ayu
    • 雑誌名

      Energies

      巻: 15 ページ: 2162~2162

    • DOI

      10.3390/en15062162

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Will smart cities enhance the social capital of residents? The importance of smart neighborhood management2021

    • 著者名/発表者名
      Nakano Satoshi、Washizu Ayu
    • 雑誌名

      Cities

      巻: 115 ページ: 103244~103244

    • DOI

      10.1016/j.cities.2021.103244

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 家庭内生産関数に基づく食生活のスマート化についての考察2021

    • 著者名/発表者名
      鷲津明由,中野諭
    • 雑誌名

      早稲田大学 先端社会科学研究所ワーキングペーパー

      巻: IASS WP 2021-J001 ページ: 1-23

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 2015年次世代エネルギーシステム分析用産業連関表(組込表)の作成2021

    • 著者名/発表者名
      鷲津明由,中野諭
    • 雑誌名

      早稲田大学 先端社会科学研究所ワーキングペーパー

      巻: IASS WP 2021-J002 ページ: 1-15

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] スマート農業の実情調査の分析:SAKL(Smart Agricultural Kaizen Level)技術マップに基づく分析2021

    • 著者名/発表者名
      鷲津明由,中野諭
    • 雑誌名

      早稲田大学 先端社会科学研究所ワーキングペーパー

      巻: IASS WP 2021-J003 ページ: 1-33

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 2011年次世代エネルギーシステム分析用産業連関表・地域間表(地域間IONGES)の作成について2021

    • 著者名/発表者名
      新井園枝,鷲津明由
    • 雑誌名

      経済統計研究

      巻: 49(2) ページ: 14-37

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] VPP事業化効果の産業連関分析2022

    • 著者名/発表者名
      鷲津明由・吉田彬・居乂義
    • 学会等名
      第38回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス
  • [学会発表] 長期環境家計簿でみる消費者のライフスタイルおよび省エネ技術変化の効果分析(2)2022

    • 著者名/発表者名
      板明果・鷲津明由
    • 学会等名
      第17回日本LCA学会研究発表会
  • [学会発表] Compilation and Application of a National Input-Output Table Extended in Virtual Power Plant Business2022

    • 著者名/発表者名
      Y. Ju, A. Washizu, A. Yoshida, M. Tayama
    • 学会等名
      The 6th International Conference on Economic Structures (ICES 2022)
    • 国際学会
  • [学会発表] 地域別家庭CO2排出量の推定手法の開発:地域別環境政策立案にむけて2021

    • 著者名/発表者名
      鷲津明由・中野諭
    • 学会等名
      第40回エネルギー・資源学会 研究発表会
  • [学会発表] 再生可能エネルギーが地域間の経済・環境構造にもたらす影響分析:地域間次世代エネルギーシステム分析用:産業連関表の推計結果2021

    • 著者名/発表者名
      鷲津明由・中野諭
    • 学会等名
      第30回日本エネルギー学会大会
  • [学会発表] 長期環境家計簿でみる消費者のライフスタイルおよび省エネ技術変化の効果分析2021

    • 著者名/発表者名
      板明果・鷲津明由
    • 学会等名
      第8回 BECC JAPAN 2021 気候変動・省エネルギー行動会議
  • [学会発表] 2015年次世代エネルギーシステム分析用産業連関表(組込表)の作成2021

    • 著者名/発表者名
      鷲津明由・中野諭
    • 学会等名
      環境経済・政策学会2021年大会
  • [学会発表] Consideration on the desirable way of smart agriculture in Japan2021

    • 著者名/発表者名
      Ayu Washizu, Satoshi Nakano,
    • 学会等名
      Going Green-EcoDesign 2021
    • 国際学会
  • [学会発表] 2015年次世代エネルギーシステム分析用産業連関表(組込表)の作成と応用2021

    • 著者名/発表者名
      中野 諭・鷲津 明由
    • 学会等名
      環太平洋産業連関分析学会
  • [図書] カーボンプライシングのフロンティア2022

    • 著者名/発表者名
      有村俊秀、杉野 誠、鷲津明由
    • 総ページ数
      270
    • 出版者
      日本評論社
    • ISBN
      978-4-535-54012-5
  • [備考] 次世代科学技術経済分析研究所

    • URL

      http://www.f.waseda.jp/washizu/

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公開日: 2022-12-28  

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