研究課題/領域番号 |
19KT0046
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
島田 貴仁 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 室長 (20356215)
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研究分担者 |
三浦 麻子 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (30273569)
星 周一郎 東京都立大学, 法学政治学研究科, 教授 (10295462)
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
川島 宏一 筑波大学, システム情報系, 教授 (00756257)
雨宮 護 筑波大学, システム情報系, 准教授 (60601383)
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研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2022-03-31
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キーワード | 情報発信 / オープンデータ / 警察 / エビデンスに基づく政策形成 / 犯罪予防 |
研究実績の概要 |
研究2年目である本年度は,各都道府県警察の犯罪情報の発信に関する調査,犯罪発生マップにおける地図表現が閲覧者の認知に与える影響の分析,犯罪オープンデータを用いた犯罪予防行動に関する実証分析を行った。 情報発信調査では,全国の47の都道府県警察本部のウェブサイトに掲載された犯罪発生マップおよび集計表を収集し,掲示形式,地図表象,時間・空間集計単位,犯罪類型をコーディングした。その結果,集計表は犯罪オープンデータ以外の幅広な罪種・手口にわたっているが,分類が都道府県によって異なり,再利用可能な形式で公開されているものは少ない,といった課題が明らかになった。 犯罪発生マップにおける地図表現が閲覧者の認知に与える影響の分析では,カーネル密度推定法を用いた地図表現の配色セットと分類手法を操作した心理実験を実施し,閲覧者の犯罪ホットスポットの位置推定の正確度および犯罪発生頻度の見積もりを従属変数として,ロジスティック回帰分析および順位の差の検定を行った。その結果,等量分類は他の分類に比べて位置推定が不正確になるととともに犯罪発生頻度を多く見積らせること,「黄-赤」の配色は他の配色に比べて犯罪発生頻度を多く見積らせることが明らかになった。 犯罪オープンデータを用いた犯罪予防行動に関する実証分析では,同データで公開された2018年の全国の自動車盗・自転車盗の被害発生場所(事案レベル)および2010/2015年の国勢調査から合成した都市度指標(市区町村レベル)を独立変数,被害時の施錠の有無を従属変数としたマルチレベル分析を行った。その結果,自動車盗・自転車盗ともに,地方部は都市部に比べて被害時の無施錠割合が高くなるが,戸建て住宅で発生した自動車盗,駐輪場で発生した自転車盗ではさらに無施錠割合が高くなることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画のうち,緊急時など不確実情報の利活用,犯罪情報の公開時における解像度設定では実証研究の知見を見出すことができた。一方で,本年度は,一般市民を対象に,警察の情報発信への接触と防犯対策に対する信頼に関する社会調査を実施する予定であったが,新型コロナウィルスCOVID-19の感染拡大によって,人々の日常行動・ライフスタイルといった犯罪の機会構造が大きく変化し,情報行動や公的機関への信頼についても大きな攪乱要因が発生していると考えられたため,実施を見送った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究を推進する。ソーシャルメディアにおける市民の信頼獲得,防犯対策への信頼の規定因について実証研究を実施するとともに,過年度も含む実証研究の結果を踏まえ,警察の情報発信における信頼の役割について学際的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画ではインターネット調査会社のモニターに対する予備調査を実施する予定であったが,新型コロナウィルスCOVID-19の感染拡大によってインターネットモニター調査を延期したたため,次年度利用額が発生した。次年度使用額は同調査実施のための先行研究の収集・整理,実査に利用する。
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