研究課題/領域番号 |
20001001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
磯部 彰 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (90143841)
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研究分担者 |
大塚 秀高 埼玉大学, 教養学部, 教授 (30126007)
金 文京 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (60127074)
鈴木 陽一 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (00131722)
磯部 祐子 富山大学, 人文学部, 教授 (00161696)
高橋 智 慶應義塾大学, 附属研究所斯道文庫, 教授 (80216720)
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キーワード | 大戯梗概 / 昇平署〓案 / 総本 / 天禄琳琅 / 傅惜華 / 鄭振鐸 / 中国地方戯曲集成 / 八旗制 |
研究概要 |
連台大戯は、昇平宝筏・楚漢春秋・鼎時春秋・昭代蕭韶・如意宝冊の梗概を完了し、関連する元明の北曲・南曲及び明代小説が与えた影響について把握した。つまり、宮廷演劇長編は、関連する内容の戯曲や小説を根本とする長編小説に組み込んで編纂される傾向にあった。そして、昇平署の〓案(道光朝・光緒朝)を通して、内廷での承応劇は連台大戯の一部分を抜粋した総本を用いることが多く、清朝国家としての儀式に使用する連台大戯全体とは区別されていた可能性がある。熱河〓案や内廷出版〓案及び清実録と対比することにより、この想定はより鮮明に明らかに出来つつある。一方、南府・昇平署の節戯は、必ずしも季節の題材に限らず、長編小説や南曲の一部を総本としたものも多く、道光以降になると民間の劇本も採用され、外班の役者によっても宮廷演劇が行なわれていたことが判明した。これは、昇平署の恩賞〓案などの史料からも裏付けられる。しかも、民間芸人の宮廷入朝は、地方劇形成において、作品内容ばかりではなく、衣裳や小道具、舞台演出に深く係わり、民国時代の京劇などが、宮廷楽人や芸人、総本等の影響下に成立した道筋を示すことが出来た。宮廷演劇の底本は、清帝が収集した小説や戯曲であるが、天禄琳琅や内閣蔵書といった皇家の善本や稀覯本とは別に所蔵されていたらしく、紫禁城内に分蔵された昇平署以外の官署の蔵書に着目している。宮廷演劇本は傅惜華・鄭振鐸旧蔵本にも含まれ、中国地方戯曲集成に収録した京劇などの作品群との一定の相関性を見いだした。宮廷演劇を上演した紫禁城や離宮は、八旗制に基づく空間構造を取り、戯台を含めて清朝の支配体制を具現化した布置と判断された。清朝の宮廷演劇関係の文物調査は、中国の他、ドイツ等で実施し、宮廷演劇と関連する明清内府本のいくつかを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連台大戯及び節戯の主要な作品は内容分析と作品梗概の作成も終了し、ほぼ宮廷戯の中心的作品の研究は目標に達しつつある。その一方で、テキスト調査ではすべて網羅していないこと、〓案類の分析もまだ未着手の部分もあるなど、当初の計画に即応した取り組みを本年度更に進め得る必要性がある。演劇史料の研究や清朝政治史と宮廷演劇との関係などは、全体研究に組み込まれて順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に刺激されて中国でも四色本の複製本などが出て、テキスト方面での新しい研究状況が生まれている。安殿本という正本については多く残らないが、テキスト研究を添えた複製化を図っていく。 宮廷演劇が清朝政治体制と深く係ることから、今後、国家儀式における連台大戯の上演と東アジア冊封体制との関係、内廷の承応戯に用いられる総本と連台大戯安殿本の関係、宮廷演劇を掌司した昇平署や武英殿の出版と王朝統治との関係を具体的に検証して行く。また、ヨーロッパに残る演劇文化資料の調査を続行するとともに、関係を構築したドイツの大学、研究者との連携を図り、宮廷演劇を中心とする明清戯曲文献の発掘と情報交換に努める。
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