研究概要 |
本研究は医工連携で行う研究であるので, 平成20年度は3大学間での合同ミーティングを延べ10回にわたり実施し, さらにてんかん治療に関して国際的トップクラスの研究者9名を招聘して国際ワークショップを開催し, 大きな学術的成果を得た. 今年度の各組織の進捗状況を以下に示す. 1. 工学系(九州工業大学と静岡大学) ハイパワー半導体パルスレーザー(808nmの近赤外線)をウシガエルの坐骨神経に照射する焼灼基礎実験を行った. レーザー光を約10分間照射すると, 活動電位伝搬能力が確実に破壊されることを確認できた. またマイクロフリージングプローブについては, 本研究プロジェクトで開発したプロトタイプを, 定位脳手術のためのレクセルフレームに搭載できるような仕様に改良した. さらに, これらのプローブに直径76umの微小電極(1対)を付加し, 電気刺激とてんかん波計測の両方が可能であることを動物実験によって確認した. また, この微小電極刺激・計測のためのコントローラ集積回路を設計し, 回路シミュレーションでその動作を確認した. 2. 医学系(山口大学) 光トポグラフィーによるてんかん原性域の同定の可能性について調べた. 非発作時のてんかん原性域の脳活動に, 低下もしくは亢進が確認された. このことは, 非発作時のてんかん焦点の脳波に徐波もしくはバーストが出現することを裏付けるものと考えられる. 現在, 光トポグラフィーの結果を同じ患者のMRIと重ね合わせ, 局所分解能を高める試みを行っている. さらに光トポグラフィーの結果が脳波, PET, MRIと一致することを確認しているが, 本検査がてんかん原性域の同定に有効である可能性は高い. てんかん原性域の凍結融解とレーザー焼灼を行う前段階として, 温度変化が大脳に与える影響(特に安全性)を確認するために, 実験動物で脳波, 脳温, 脳血流, 神経伝達物質等の測定をおこなっている.
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