研究概要 |
本研究では,我々により推進してきた同位体顕微鏡による隕石の解剖学をさらに発展させ,隕石のいわゆる『解体新書』を作成する。その成果に基づき,太陽系創世時代とそれに直接つながる先太陽系時代の物質進化を解明し,宇宙における太陽系の特殊性と一般性を区分した新しい太陽系起源論を構築する。そして物質に刻まれた証拠に立脚した汎惑星系起源の構築に挑戦する。具体的には「始原隕石中にのこる先太陽系時代の物質の系統的な研究」,「太陽系における酸素同位体異常とその他元素の同位体的均質性の起源と進化の解明」,「太陽系創世時代の物質進化」の課題に取り組み目的を達成する。本年度は以下の研究成果が得られた。 1.隕石から始原状態を維持しているものを高輝度高分能走査電子顕微鏡を用いて選定し,分析試料の作成を継続した。 2.太陽系を作った原材料物質の起源と種類を解明するため,隕石の種類毎に先太陽系物質の特徴・存在度についてデータベース作成を継続した。 3.太陽系の平均酸素同位体組成を解明するため,太陽系創世時代の太陽風の酸素同位体組成の測定を継続した。 4.同位体異常の起源と進化を解明する鍵は,マトリックス鉱物の同位体の空間分布を測定することである。16Oに富む物質と,逆に17,18Oに富む物質の存在度と分布の測定を継続した。又,金属元素の同位体異常の空間分布についての分析を継続した。 5.太陽系創世期の物質進化を解明するため,短寿命核種26Alを用いた年代測定を適用し,太陽系創世時代の物質進化タイムスケール解明研究を継続した。 6.同位体ナノスコープの要素技術である飛行時間型質量分析部に周回同期イオンゲートを開発した。 7.小型同位体顕微鏡を組立て,隕石分析体制を強化した。 8.隕石母天体上に存在した太陽系形成当時の水を直接分析するためコールドステージを開発した。 9.太陽系形成初期の熱環境を再現する実験を開始した。
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