研究課題/領域番号 |
20002003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
早野 龍五 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30126148)
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キーワード | 反陽子原子 / K中間子原子 / エキゾチック原子 / CERN / J-PARC / レーザー分光 / X線分光 / 基礎物理定数 |
研究概要 |
エキゾチック原子は、反陽子など、電子以外の負電荷の粒子が原子核のまわりを回っている、自然界には存在しない奇妙な原子であり、それらが放出・吸収する光の周波数を精密に測定することで、通常原子の分光では得られない基礎物理定数を精密に決めることができる。 本研究では、(1)反陽子ヘリウム原子と(2)K-中間子ヘリウム原子の2種類のエキゾチック・ヘリウム原子を高精度で分光し、陽子・電子質量比などの基礎物理定数の精度を格段に高めることをめざす。前者の研究はCERN研究所の反陽子減速器施設で、後者の研究はJ-PARC加速器のハドロン実験施設で推進する。 本年度、CERNにおいて行なってきた反陽子ヘリウム原子の二光子分光の成果がまとまり、Nature誌に発表した。 これに先立ち、我々がこの実験で決定した反陽子・電子質量比(CPT対称性を仮定すればこれは陽子・電子質量比に等しい)を、基礎物理定数を調整している科学技術委員会CODATAに提供したところ、基礎物理定数の最新値CODATA2010に、我々の実験結果が反映された。これにより本研究の当初目的の一つが達成された。 また、昨年度より行なっている1.5Kに冷却してドップラー幅を狭めた反陽子ヘリウム原子の分光データの収集を完了した。 一方J-PARCにおいては、東日本大震災で被害を受けた実験装置等の復旧につとめ、加速器運転がされれば実験が可能な状況にまで回復することが出来た。しかし現時点では実験開始に至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CERNにおける反陽子ヘリウム原子分光は順調に進み十分な成果を上げているが、J-PARCにおけるK中間子原予のX線分光実験は、東日本大震災による加速器・実験室の被災、および実験再開後のビームタイムの割り当ての都合により、まだ実験開始に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
CERNにおける反陽子ヘリウム原子分光の実験精度は、最終年度の実験により更に上がり、当初目標を達成出来る見込みである。J-PARCにおける実験については、十分な準備を終えて実験開始を待っており、可能な限り早期に完了して成果を出す。
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