研究概要 |
補酵素NAD/NADH型の酸化還元能を有する2-(2-ジピリジル)-ベンゾ[b]-1, 5-ナフチリジン(pbn)配位子を有する[Ru(bpy)_2(pbn)]^<2+>をD_2O/(C_2H_5)_3N/CH_3CN(1:1:8)中で可視光を照射するとpbn配位子の2電子還元による立体特異的重水素化が起こり[Ru(bpy)_2(pbhDD)]^<2+>を生成することを見出した。一方、同錯体をD_2O/CH_3CN(2:8)中でNa_2S_2O_4を用いた化学的な2電子還元反応では、pbn配位子の立体特異的重水素化は全く観測されなかった。以上の結果は[Ru(bpy)_2(pbn)]^<2+>の可視光照射で、まずpbnの5位窒素へのD化で生成したラジカル性配位子を有する[Ru(bpy)_2(pbnD)]^<2+>が分子間π-π付加体を形成し、2量体内での電子とD+の移動による不均化反応で2電子還元体と酸化体が生成(2[Ru(bpy)_2(pbnD)]^<2+>→[Ru(bpy)^2(pbnDD)]^<2+>+[Ru(bpy)_2(pbn)]^<2+>)していることを示しており、その過程には溶媒のD_2Oは全く関与しないことを示している。この成果は1光子励起で光多電子還元反応が論理的に可能であることを示した最初の研究例である。
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