研究概要 |
補酵素NAD/NADH型の酸化還元能を有する2-(2-ジピリジル)-ベンゾ[b]-1,5-ナフチリジン(pbn)配位子を有する[Ru(bpy)_2(pbn)]^<2+>をH_2O/(C_2H_5)_3N/CH_3CN(1:1:8)中で可視光を照射すると2電子還元による[Ru(bpy)_2(pbnHH)]^<2+>が生成する。さらに、同一条件下[Ru(bpy)_n(pbn)_<3-n>]^<2+>(n=0,1)の光還元反応でも,4,6電子還元による[Ru(bpy)_n(pbnHH)_<3-n>]^<2+>が生成した。この結果は単核の金属錯体においても光誘起4,6電子還元反応が論理的に可能であることを示した最初の研究例である。さらにRu(trpy)(bpy)Ru-Cl-Ru(trpy)(bpy)骨格を有する二核Ru錯体をCe(IV)で酸化すると効率良く水の4電子酸化反応による酸素発生が起こることが明らかとなった。酸素発生が終了し、過剰のCe(IV)が消費された反応溶液のラマンスペクトルではH_2^<16>O中では440cm^<-1>と824cm^<-1>に新たなピークが観測された。それらの吸収帯はH_2^<18>O中では424cm^<-1>と780cm^<-1>にシフトした。一方、単核の[Ru(bpy)(trpy)(OH_2)]^<2+>を同様な処理で[Ru(bpy)(trpy)(O)]^<2+>に酸化するとν(Ru^<Iv>=^<16>O)とν(Ru^<Iv>=^<18>O)は819cm^-1と785cm^<-1>に観測された。これらの事実は二核錯体で観測された二つの吸収帯(H_2^<16>Oでは440cm^<-1>,824cm^<-1>)はRu-O-O-Ruに基づくν(Ru-O)とν(O-O)の吸収帯であると結論され、2分子の水が4電子酸化を受けて酸素発生を起こす際の酸素-酸素結合生成過程が初めて確認された。
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