地球が数十億年の歳月をかけて太陽エネルギーを化学的に固定して生成した化石燃料を現代社会は今世紀中に消耗し尽くすことが危惧されている。人類が生体系と同様に、持続性のある社会を形成するには物質循環と共役したエネルギー変換反応の開発が必要不可欠である。その実現には還元反応および酸化反応による物質変換に付随した化学エネルギーの変化量を電気エネルギーとして注入あるいは抽出しうる再生可能な触媒開発が必須である。筆者は、これまでに二つのRu-OH_2結合を有する二核Ru錯体を用いて二つのRu-O(オキシルラジカル)基のカップリング反応を経由する酸素発生(TON=33500、Tanaka Catalyst)は従来の水の酸化反応触媒能に比して飛躍的に活性であることを示し、平成22年度には、その誘導体を用いて2分子のH_2^<16>OあるいはH_2^<18>Oの酸素一酸素結合生成過程を共鳴ラマンスペクトル法で始めて測定した(Ru-^<16>O-^<16>O-Ru(824cm^<-1>;Ru-^<18>O-^<18>O-Ru(780cm^<-1>))。さらに平成23年度には、単核のRu-OH_2錯体を由来のRu=O結合の末端オキソ基がバルクの水分子と反応して02発生が起こる際に}ま、Ru=0結合の分極性が触媒活性に決定的な影響を与える事、その分極性はRu=0結合のトランス位の配位子により制御が可能であることを明らかにした。その結果、水の4電子酸化による酸素秀生に闘しては、二つの金属-オキシルラジカル基のカップリング反応と高原子価金属-オキソ結合の末端酸素とフリーの水分子が反応する2つの経路が存在し、それぞれの反応の律速過程を明ちかにした。
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