研究概要 |
固液界面反応の厳密な制御による材料創製理念を深化させ,新機能デバイス開発のための三次元構造や二次元反応場,さらに零次元ナノ粒子での界面設計と制御を進め,電気化学系での新機能材料創製からデバイス構築手法までを学問領域として体系化するという目的に則り研究を展開した.以下,三次元,二次元及び零次元界面の成果を示す. (1)三次元界面:リチウム二次電池電極材料の三次元構造及び電極/電解質界面(界面被膜に対する多角的な評価を機軸に研究を展開した.新規負極用材料では,有機溶媒から電解析出したSn-0-C及びSi-0-C系薄膜により大容量且つ良好なサイクル特性を実現した,また,大容量硫黄正極の実現に向けた研究を推進した。一方で,燃料電池の新規触媒層としてメソポーラス合金担持三次元網目構造触媒層を開発し,発電特性の向上を実現した. (2)二次元界面:タンパク質検出FETセンサとして,抗体固定化ゲートを認識場として腫瘍マーカーの夾雑物存在下での検出を実現した.また,糖鎖を単分子層レベルで修飾したゲートを認識場としてレクチンの検出を実現した.FET型キラルセンサ開発では,単分子膜上での錯形成反応に関する量子化学計算に着手した.さらに,表面修飾ITO電極が示す特異的な電位応答に関しては,表面修飾によって実現する適切な仕事関数の存在が見いだされた. (3)零次元界面:次世代垂直磁気記録方式の磁性層形成のためのFePtナノ粒子の規則配列化手法の洗練化を目的とし,基板上に形成した有機単分子膜を介してFePtナノ粒子を固定化する際の,ナノ粒子分散溶液濃度の最適化を図った.一方で,Fe304ナノ粒子の医療応用に向け,ナノ粒子/溶液界面の制御に基づくがん細胞への取り込み効率の向上と,交流磁場印加時の発熱によるがん細胞死滅を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
三次元,二次元,零次元というそれぞれの視点における界面の役割が明確になるとともに,一つのデバイスに対する複数の次元からのアプローチと,ある次元で得られた知見の複数のデバイスの界面設計へのフィードバックとが有機的に展開しはじめており,電気化学デバイス工学の体系化が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
三次元,二次元,零次元それぞれの界面設計と材料及びデバイス機能発現との関係について,「次元による類別と整理に基づく体系化」と「対象デバイスの種類に依存しない普遍性の抽出」をさらに推進し,各種デバイスの実践的開発研究を実用化に近づける過程でさらに得られる知見から「界面設計と機能発現に関わる普遍性への議論と理解」を深めることで,電気化学デバイス工学として学理の確立を図る.
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