研究概要 |
制御性T細胞(Regulatory T cell、以下Tregと略)の発生・機能のマスター転写因子Foxp3の機能を、それに結合する分子の同定・解析、およびFoxp3の制御する下流遺伝子とその産物の機能について解析を進めた。まず、Foxp3が転写因子Runx1と結合するとの結果に基づきTerg特異的にRunx1、Runx3、あるいはこれらのco-factorであるCBF-・を欠損するマウスを作製したところ、Runx1あるいはCBF-b欠損マウスは自己免疫病、高IgE血症を自然発症し、in vivo, in vitroにおけるTreg抑制機能が低下していた。この結果は、Foxp3/Runx 1転写複合体がTregの抑制機能の発現に重要であることを意味する。一方、Foxp3が制御する下流分子としてCTLA-4に注目し、Treg特異的CTLA-4欠損マウスを作製したところ、このマウスは致死的自己免疫病(心筋炎など)、高IgE血症を自然発症し、また自家腫瘍に対して強力な免疫応答を示した。CTLA-4欠損は、Tregの発生、生存、活性化には影響しないが、in vitro, in vivoでの抑制活性が顕著に低下させた。さらに、Tregに発現するCTLA-4は、樹状細胞上の副刺激分子CD80, CD86と結合し、その発現を低下させることによって、他のT細胞の活性化を妨げるとの結果を得た。これはTregによる免疫抑制の重要な分子機構と考える。さらに、本年度はTregの自己免疫、腫瘍免疫、移植免疫における役割に関して解析を進めた。ヒトTregについては、末梢血中のFoxp3発現T細胞は機能的に均一ではなく、CD45RA、CD25の発現程度によって3つの亜群に分けうることを示し、この分類がTregの機能解析、特に諸種免疫疾患におけるTregの動態解析に有用であることを示した。
|