研究課題
本年度は、主として、T細胞抗原レセプター(TCR)を介するシグナル強度によって、制御性T細胞(Regulatory T cell、以下Tregと略)および他のT細胞のTCR認識範囲(TCRレパトア)がどのように形成されるかについて解析した。即ち、TCR近傍シグナル分子ZAP-70に突然変異を有するSKGマウスについて、正常マウス、ZAP-70ノックアウトマウスと掛け合わせることにより、ZAP-70遺伝子に関して+/+,skg/+,skg/skg,skg/-の遺伝型をもつマウスを作製すると、変異遺伝子の量によって、+/+,skg/+,skg/skg,skg/-の順にTCRシグナルが減弱した。その結果、skg/skg、skg/-の2系統のマウス、特に後者は自己免疫性関節炎を自然発症した。また、skg/skg、skg/-マウスのTregは抑制能が顕著に障害されていた。これはTregの抑制能にはTCR刺激が必要であることによる。さらにTregのTCRレパトアも著しく自己反応性に偏っていた。興味深いことに、制御性T細胞に特異的に発現する転写因子Foxp3は、ZAP-70遺伝子のプロモーター部位に結合して、その発現を抑制することを見出した。前年度、Foxp3はCTLA-4分子の発現を亢進させること、その結果CD28を介する引く刺激を減弱させ、またTCRシグナルを減弱させることを見出した。即ち、Foxp3によるCTLA-4、ZAP-70発現制御は相乗的にTCRシグナルを減弱させ、自己反応性の高いTCRを発現するTreg細胞は、シグナル減弱を補償できるため"正の選択"を受け、同時に"負の選択"を免れるため、TCRレパトアをより自己反応性に偏移させると考えられた。この結果は、Tregの自己反応性TCRレパロアがどのように形成されるか、その分子メカニズムを解明したことになる。
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