研究課題
本年度、制御性T細胞(Regulatory T cell、以下Tregと略)の発生、および機能におけるエピゲノム変化について解析した。Tregは転写因子Foxp3を特異的に発現するが、Foxp3の発現のみではTregに特有な遺伝子群(例えば、Helios、Eos)の発現、また抑制機能の発揮には不十分である。この不十分性を補完する重要な因子はTreg特異的なエピゲノム変化である可能性を探索した。まずゲノム全般についてメチル化領域を検索し、Treg特異的脱メチル化部位を決定した。次に、Foxp3を発現しないがFoxp3レポーター分子を発現するマウスを作製し、Foxp3とTreg特異的脱メチル化の関係を解析したところ、Helios、Eosなどの遺伝子は、Foxp3に依存しないがエピゲノム変化に依存すること、また、Foxp3発現とTreg特異的エピゲノム変化は独立して起こる事象であることを見出した。さらに、どちらの事象もT細胞抗原レセプター(TCR)を介する刺激によって惹起されるとの結果を得た。即ち、TCRトランスジェニックマウスを用いて、胸腺でのTregの発生に必要な強度のTCR刺激が供されると、胸腺TregにTreg型遺伝子脱メチル化の誘導を確認した。TCRを介する刺激が弱いTCRトランスジェニックマウスでは脱メチル化は起こらなかった。さらに、通常のT細胞を用いた場合には、慢性的なTCR刺激によって、部分的に、このような脱メチル化を惹起できた。これらの結果から、機能的にまた表現型として安定なTregを誘導するためには、Foxp3の発現のみではなく、Treg特異的エピゲノム変化を誘導することの重要性が明らかとなった。この知見は、ヒトのTregを標的とした免疫応答制御法の開発に重要である。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、制御性T細胞の発生、機能における分子的機序の解明を目的とする。本年度の成果、即ち、制御性T細胞特異的エピゲノム変化の発見と解析は、転写因子とエピゲノム変化が相まってリンパ球の細胞系譜の決定、機能の安定性の維持に働くことを示す良いモデルを提供できたと考える。
本研究課題では、引き続き、転写因子Foxp3の機能と制御性T細胞特異的エピゲノム変化の二つの研究を、平行して遂行していく。また、これまでの成果に基づき、ヒト制御性T細胞の発生、機能の分子的基礎についても研究を進める。特に、制御性T細胞が癌免疫を抑制する作用について、その分子機構の解析と抑制解除の方法を探る。
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