1)我々が新たに同定した微小管マイナス端結合タンパク質Nezhaについて研究を進め、以下の予備的結果を得た。Nezhaは、始め細胞間接着部位から同定されたが、細胞質にも分布している。その機能を探るため、細胞が他の細胞と接触しない状態でNezhaをsiRNAにより除去したところ、細胞運動が著しく阻害されると共に、アクチン繊維の挙動が大きく変化した。この結果から、Nezhaが単細胞状態でもその運動のために大きな役割を持つことが示唆され、今後の研究の新しい方向が見いだされた。 2)カドヘリン接着機構と微小管の関係を示唆する新しい現象を見いだした。αN-カテニンを除去した細胞では、微小管の分布が変化し、並行して細胞の移動能に異常が生じた。同様なことが、N-カドヘリンの存否に対応しても見いだされた。これらの現象にNezhaが関与するかどうかまだ不明であるが、いずれにせよ、カドヘリンが微小管及び細胞移動を制御するという新たな現象が見つかり、カドヘリン-微小管系の関係についての研究をより深めることが可能となった。 3)カドヘリンとアクチンの関係を探るため、カドヘリンとアクチンの間を橋渡ししていると想定されるα-カテニンに結合するタンパク質の新たなスクリーニングを行った。その結果、アクチン結合タンパクの1つフィラミンが新たに同定された。以前、α-カテニン結合タンパク質として同定したエプリンと分布を比較すると、エプリンは、上皮型の接着構造のみに分布して繊維芽細胞型の接着構造からは消失するのに対し、フィラミンは後者で残存した。このことは、細胞結合のタイプによって、異なるアクチン結合タンパクが働くことを示唆しており、細胞接着様式の細胞タイプによる転換機構を見いだすための糸口が見つかった。
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