研究課題
平成23年度は、とくに以下の2点について成果があがった。1.トリ胚の神経管が閉じる機構を解明した。神経板を構成する神経上皮細胞は頂端部でAdherens Junction(AJ)によって繋がっている。このAJが、胚の吻側尾側軸に対し直角方向に収縮することにより、神経板が体軸に添って折れ曲がることが分かった。さらにその機構を探り、平面内極性を制御することが知られるCelsr1が特定のAJに集まり、DishevelledおよびDAAM1と共同しながらPDZ-RhoGEFを活性化させ、その結果、Rho kinaseが活性化し、AJに分布するアクトミオシンが収縮することを明らかにした。本研究は論文にまとめ投稿中である。2.AJに分布し微小管の負端と結合するNezhaの機能について新しい知見を得た。Caco2細胞を用い、Nezhaと構造的に類似したCAMSAP2について調べた結果、両者が共存するクラスターを作り、AJだけでなく、細胞質全体に散らばって分布することが分かった。その機能を明らかにするため、Nezha及びCAMSAP2を除去した。上皮細胞Caco2細胞は、本来、非中心体微小管しかもたないが、Nezha/CAMSAP2除去の結果、中心体微小管が生ずる。この効果は、それぞれ単独の除去でも見られたが、両方同時に除去すると増大したので、両者が類似の機能を有しながら共同的に作用していることが明らかになった。さらに、Nezha/CAMSAP2除去によって、種々のオルガネラの分布が変化した。その原因についてゴルジ体を中心に調べた結果、ERとゴルジ間の膜の往来に異常があることが分かった。以上の結果から、Nezha及びCAMSAP2によって特定の微小管が安定化し、ゴルジ等のオルガネラの維持には、この微小管が大切な役割をしていることが明らかになった。本成果については、論文準備中である。
1: 当初の計画以上に進展している
これまで得られた成果の多く(たとえば、神経板の折れ曲がり機構、Nezha及びCAMSAP2によるオルガネラの制御機構の発見)は、当初予想できなかった発見であり、当初の計画以上に進展していると自己評価している。研究論文の出版について遅れがちであるが、これは研究の完成度を高めるためであって、研究の進捗に問題があるわけではない。
平成23年度の研究実績概要に記載していない計画項目についても、研究は順調に進展しており、平成24年度中にはこれらを終了し、論文として出版することを予定している。
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