とくに以下の2点について進展があった。 1、カドへリンと微小管の相互作用に関する研究:以前の研究により、分子モーターKIFC3がNezha由来の微小管を介して 細胞接着部位に移動することを明らかにしていたが、今回、KIFC3によって運ばれる分子の同定を進めた。その結果、KIFC3にユビキチンプロテアーゼの一種USP47が結合すること、そして、KIFC3に依存してUSP47が接着部位に集まることが分かった。この USP47の機能を解析したところ、E-カドヘリンのユビキチン化を阻害することにより、カドヘリン依存の細胞間接着を安定に保つ作用があることが明らかになった 。本結果を公表するための論文を準備中である。 2、プロトカドへリンに関する研究:2群に属するプロトカドヘリンの中、プロトカドへリン17(Pcdh17)を選びその機能を研究した。Pcdh17ノックアウトマウスを作製し表現型を解析した結果、扁桃体に属する神経細胞の軸索伸長に異常があることが明らかになった。次に、Pcdh17の分子機能を解明するため、培養細胞に強制発現させてその効果を調べたところ、細胞接着部位にアクチン重合制御因子WAVE複合体を濃縮させることにより、その部位の運動活性を上昇させることが分かった。この知見を元に、扁桃体神経軸索伸長におけるPcdh17の役割を解析したところ、成長円錐が他の神経細胞に接触したとき、Pcdh17の存在により WAVE複合体が濃縮し、これが神経軸索の伸長を維持・促進していることが明らかになった。以前、やはり2群に属するプロトカドへリン10について類似の活性を検出していたが、今回の研究により、神経軸索伸長におけるこの分子群の作用機序が一層明確になった。本研究についても発表論文の準備に取りかかっている。
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