研究課題/領域番号 |
20002010
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平野 達也 独立行政法人理化学研究所, 平野染色体ダイナミクス研究室, 主任研究員 (50212171)
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キーワード | 染色体構築 / 染色体凝縮 / コンデンシン / コヒーシン / 体細胞分裂 / 減数分裂 / DNA複製 / セントロメア |
研究概要 |
(1)2つのコンデンシン複合体の動態と制御:ヒト培養細胞において、コンデンシンIIがS期からクロマチンに結合し、複製直後の姉妹染色分体の再構築に関わっていることを示唆するデータを得た。また、マウス卵母細胞におけるコンデンシンIとIIの動態を解析した結果、体細胞分裂との共通点および相違点が観察された。(2)染色体の構築と分離におけるコンデンシンの役割:カエル卵抽出液を用いて、2つのコンデンシン(IとII)とコヒーシンの存在比を精密に操作できる実験系を確立し、これら3つの複合体の精妙なバランスが染色体の形態を決定していることを示した。一方、マウス卵母細胞を用いてコンデンシン抗体の顕微注入による機能阻害実験を行った結果、2つのコンデンシンが減数分裂期染色体の構築と分離において固有の機能を果たしていることを明らかにした。(3)コンデンシンの分子メカニズム:バキュロウイルス系で発現させた組換えサブユニットを用いて、哺乳類コンデンシンIのホロコンプレックス(および制御サブユニットをひとつずつ欠いた欠失複合体)を再構成することに成功した。また、枯草菌由来のコンデンシン様複合体(Smc-ScpA-ScpB)をモデル系として、いくつかのサブコンプレックスの結晶構造を解いた。(4)個体レヴェルにおけるコンデンシンの機能解析:コンデンシン複合体の3つのサブユニットについて、conditionalノックアウトマウスを作製している。このうち、SMC2については+/-および+/floxヘテロ接合型マウスの作製が完了した。以上のように、多彩な実験材料と多角的なアプローチを駆使することにより、コンデンシンとコヒーシンの構造・機能・制御・協調作用について、膨大なデータと深い理解が得られつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
複数の重層的なプロジェクトについて膨大なデータが蓄積するとともに、それらの成果は着実に論文発表へと結実している。現在進行中のプロジェクトは、当初の計画を大きく上回るものに発展しており、本研究課題の終了時には「当初の目標をはるかに超える」成果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)コンデンシンIIが複製直後の姉妹染色分体の再構築に関わっていることを証明するため、特定の染色体の全長にわたって組織的なFluorescent in situ hybridization(FISH)法を適用する。(2)磁気ピースを利用した操作性の高い基質をカエル卵抽出液に導入することにより、コンデンシンの分子機能についての理解を深める。(3)再構成したコンデンシン複合体とその変異体の生化学解析を進め、染色体構築の分子基盤を解明する。枯草菌をモデル系とした構造生物学的アプローチをさらに進展させ、真核生物のコンデンシン複合体の構造解析につなげる。(4)コンデンシンサブユニットの条件的ノックアウトマウス3系統の作製を完成させ、コンデンシン複合体の生体内機能(特に減数分裂における役割)の理解を目指す。
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