細胞のがん化プロセスに関わる生体内分子を可視化することのできるMRIプローブの創製は、個体レベルでがん化のメカニズムを明らかにするうえで極めて有用である。細胞のがん化には、種々の遺伝子の発現異常が起こることが知られているため、遺伝子発現を可視化することのできるMRIプローブは、がん細胞を個体レベルで検出することが可能である。本研究では、遺伝子発現研究に汎用されるレポーター遺伝子のうち、□-galactosidaseの酵素活性を検出することのできるMRIプローブを設計・創製した。MRIプローブは、^<19>Fを含む化合物とその信号を抑制する常磁性金属錯体から構成される。このプローブに□-galactosidaseの反応部位を導入し、酵素活性により、プローブと反応すると^<19>F化合物と常磁性金属錯体が解離するようにデザインする。このデザインでは、分子内に常磁性の原子が存在するとT_2短縮効果により観測核種のNMRピークがブロード化して消失する現象を利用している。このプローブを用いることにより、酵素反応に伴い抑制されていた^<19>Fの信号が回復し、信号強度の増加を指標としたレポーター遺伝子の発現を確認することができる。 ^<19>F-NMRを測定したところ、酵素反応前は、MRIプローブのNMRピークが消失しており、酵素反応の進行に伴い、シグナル強度の増大が観測された。^<19>F-MRIを撮像したところ酵素反応に伴い、コントラストが明瞭となった。これらの結果から、□-galactosidaseの活性を検出するにとのできる^<19>F-MRIの創製に成功したといえる。
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