研究課題
Rbがん抑制遺伝子ヘテロ型欠損マウスを中心に、様々な複合遺伝子変異マウスを作製し解析してきた。Rb不活性化時に、Ras依存的なDNA損傷応答と細胞老化シグナルが誘導され、がんの悪性化に拮抗することを遺伝学的に証明した。また、その機序として、Rbが、E2FとSREBP依存的に、Ras蛋白質等のイソプレニル化を制御することを見いだした。このことの臨床的意義を追求している。本年度は更に、胚性幹細胞・がん幹細胞におけるRb-Ras経路の役割に注目した。Rb-N-rasあるいはRb-Ink4a両欠損マウス胚繊維芽細胞(MEF)は、Rb単独欠損MEFよりも細胞老化を逸脱する能力が高い。ところが、Rb-N-ras両欠損マウスMEFは、Rb単独欠損MEFよりも高い分化能力を持つ。この現象の意味はなんだろうか?Rb-N-ras両欠損マウスMEFは、特殊な条件下で長期間培養すると、Nanog+/Oct-3/4+/Sox-2+の胚性幹細胞様の細胞塊を形成する。この活性は、Rb単独欠損MEFでも観察されるが、N-ras追加欠損によって約100倍効率が上昇する。また、Rb-N-ras両欠損マウスMEF由来の細胞塊は、免疫不全マウスの特定のニッチに導入すると、腫瘍を形成する。Rb不活性化は、様々な固形がんの悪性進展時において頻繁に観察される。様々な系を用い、固形がんのがん幹細胞の成立にRbとRasの関係が関わる可能性があるかを追求している。一方、Rasの拮抗的下流遺伝子RECKの標的シグナル経路を、いくつかの複合遺伝子変異マウス・細胞を用いて同定した。RECKが、MMP-2依存的に、β1-integrinシグナルとEGFRシグナルを制御することを見いだした。
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