UV-DDBとヒストンアセチル化酵素(HAT)CBP/p300との相互作用がヌクレオチド除去修復(NER)において果たす役割を調べる目的で、まずsiRNAによりHATをノックダウンし、NER活性に対する影響を解析した。ヒト正常線維芽細胞WI38 VA13においてHATをノックダウンしたところ、特にp300をノックダウンした際に紫外線照射後の(6-4)光産物の修復に有意な遅延が観察された。さらに、細胞をヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤であるtrichostatin Aで処理したところ、(6-4)光産物の修復はむしろ遅延することがわかった。このことはグローバルなクロマチン構造の弛緩はゲノム全体のNERにとって決して有利なことではなく、損傷部位における特異的なクロマチン構造の変換が重要であることを示唆している。一方、精製した組換えHATタンパク質を用いてin vitroでUV-DDBのアセチル化反応を行い、DDR2のアセチル化部位を質量分析により同定した。その結果、DDB2の少なくとも2か所のリジン残基が比較的効率よくアセチル化されることがわかったため、これらのリジンをアルギニンやアラニンに置換した変異DDB2を作成し、DDB1との複合体として昆虫細胞中で発現・精製を行った。この変異UV-DDBを基質としてin vitroアセチル化反応を行ったところ、依然としてアセチル化が観察されたため、さらに質量分析による解析を行って複数の修飾部位を同定した。これらの修飾部位について変異体の作成を進めている。
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