研究課題/領域番号 |
20012033
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松井 利充 神戸大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (10219371)
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研究分担者 |
片山 義雄 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (80397885)
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キーワード | がん抑制遺伝子 / ZC3H12D / リンパ球 / 細胞周期 / アポトーシス / P-body / 悪性リンパ腫 / 白血病 |
研究概要 |
t(18 ; 22)転座を有する濾胞型リンパ腫が彌慢性リンパ腫への形質転換により悪性度が進展する際に、新たに加わった稀なt(2 ; 6)転座症例より発見した6q染色体上にある新しい癌抑制遺伝子TELの細胞生物学的機能の解析を進めた。当該遺伝子発現を欠くヒト白血病細胞株Jurkatに、2種類のスプライスバリアントのTFLcDNA(TFL1 & TFL2)を導入・発現させたところ、いずれのcDNAも白血病細胞のRb蛋白のリン酸化を抑制し、G1からS期への進展ならびに細胞増殖を阻害した。さらに、白血病細胞のアポトーシスも誘導した。すなわち、TFL遺伝子発現は、白血病細胞のがん細胞としての特性を消し去り、ヒトがん細胞において「がん抑制遺伝子」として機能しうることが証明できた。また、FISH法を用いた「遺伝子診断法」を確立し、がん診断マーカーとして有用かどうか検証したところ、ヒトのリンパ系悪性腫瘍のおよそ10%において当該遺伝子欠損が認められた。TFLの生理機能を解析するため作成したTFL遺伝子単独欠損マウスではリンパ腫の発生は認めないが、野生型マウスに比し脾細胞の増多が示唆される。多段階発がん動物モデルとして、リンパ増殖性疾患を発症するBCL2を過剰発現しているトランスジェニック(Tg)マウスとTELノックアウト(KO)マウスを交配させて、リンパ腫発生の有無について解析を進めている。TFL遺伝子産物P58およびP36は、それぞれ細胞質および核内に特異的に局在する。いずれのTFLアイソフォームもZnフィンガー・ドメインを有し、核酸との相互作用が予想される。すなわちTFLは細胞周期や細胞死を制御する機能分子の転写制御や翻訳後修飾にかかわり、発がんを抑制していると考えられる。
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