研究概要 |
5-azacytidine(azadC), zeburaline, melphalan等の抗がん剤は, DNA代謝酵素やDNA結合タンパクを不可逆的にゲノムにクロスリンクし, がん細胞を死滅させる。しかし, 細胞が持つDNA修復機能は生じたゲノム損傷を除去し抗がん剤の効果を低減する。本研究では, がん細胞の抗がん剤耐性機構をDNA修復の視点から明らかにする目的で, 抗がん剤で生じる巨大付加体(DNA-タンパク質クロスリンク)の修復機構を検討した。 azadCは, 細胞内で代謝されDNAに取り込まれた後, DNA cytosine methyltransferase(DNMT)の反応中間体をトラップしてDNMT巨大付加体を誘発する。そこで, DNA修復機能を欠損した一連のチャイニーズハムスター細胞を用い, azadC感受性を調べた。相同組換え(HR)を欠損した51D1細胞(RAD51D), irs1SF細胞(XRCC 3), irs1細胞(XRCC 2)は高感受性を示したが, 非相同末端結合(NHEJ)を欠損したV3細胞(DNA-PKcs)は感受性を示さなかった。ヌクレオチド除去修復(NER)を欠損したUV5細胞(ERCC 2)およびUV41細胞(ERCC 4)も弱い感受性しか示さなかった。また, 51D1細胞をRAD51D cDNAで相補した細胞(51D1.3)の感受性は野生型のレベルまで回復した。以上の結果から, azadCにより生じたDNMT巨大付加体は, HRにより回避され, NHEJおよびNERは修復に関与しないことが示唆された。この結果と一致して, ヒト由来NER欠損細胞(XP12ROSV, XP4PASV)はazadC感受性を示さなかったが, HRを欠損したFAD423SVT細胞は感受性を示した。HRの関与は, azadC処理した細胞の核内RAD51およびγ-H2AXフォーカス形成からも確認された。
|