研究概要 |
発がん抑制における酸化的DNA損傷の防止・修復系の役割を解明することを目的に、標的遺伝子組換えで樹立した各種DNA修復能欠損マウスを用いて下記の実験を行った。 (1) Msh2遺伝子欠損マウスを用い、KBrO_3の飲水投与による消化管での酸化ストレスによって誘発される突然変異の解析を行った結果、1塩基欠失変異が高頻度で誘発されていた。 (2) Msh2遺伝子欠損マウスにおいて顕著に発生が上昇していた酸化ストレス誘発消化管腫瘍の組織でのCtnnb1遺伝子の突然変異解析を行い、これまでに調べた44例のうち15例に塩基置換変異を認めた。 (3) 酸化的DNA損傷に起因する突然変異の抑制におけるMth1およびミスマッチ修復系の役割を解明するために、Msh2遺伝子欠損、Msh2遺伝子欠損・MTH1トランスジェニックマウスでのrpsLレポーター遺伝子を用いた酸化ストレス誘発突然変異の解析を行い、Msh2遺伝子欠損マウスで高頻度に誘発されていた1塩基欠失変異のうち、特定の配列で生じていた変異の頻度がMsh2遺伝子欠損・MTH1トランスジェニックマウスでは低くなっていたことから、この変異は酸化プリンヌクレオチドの取込みにより生じることが推測された。 (4)Mth1, Ogg1, Trp53遺伝子欠損マウスを用いて、酸化ストレス条件下における消化管での発がん解析を行った結果、Trp53遺伝子欠損マウスでは消化管腫瘍の発生頻度が顕著に上昇していた。一方、Mth1, Ogg1遺伝子欠損マウスでの消化管腫瘍の発生頻度は野生型マウスと比較して2倍程度上昇していた。
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