研究概要 |
発がん抑制における酸化的DNA損傷の防止・修復系の役割を解明することを目的に、標的遺伝子組換えで樹立した各種DNA修復能欠損マウスを用いて下記の実験を行った。 (1) Mth1, Ogg1遺伝子欠損マウスを用いて、 KBrO3の飲水投与による消化管での酸化ストレスによって誘発される突然変異の解析を行った結果、Ogg1遺伝子欠損マウスではG→T変異、Mth1遺伝子欠損マウスでは1塩基欠失変異が高頻度で誘発されていた。 (2) Msh2遺伝子欠損マウスにおいて顕著に発生が上昇していた酸化ストレス誘発消化管腫瘍92例でCtnnb1遺伝子の突然変異解析を行い、22例に塩基置換変異を認めた。その内訳は、G→A変異:16例,G→T変異:2例,G→C変異:2例,A→G変異:2例であった。 (3) Trp53遺伝子欠損マウスを用いて、酸化ストレス誘発消化管発がん解析を行った結果、Trp53遺伝子欠損マウスでは消化管腫瘍の発生頻度が顕著に上昇していた。これらの腫瘍13例でCtnnb1遺伝子の突然変異解析を行い、3例に塩基置換変異を認めた。 (4) 野生型およびTrp53遺伝子欠損マウス小腸におけるOgg1, Mutyh遺伝子の発現をReal-Time PCR法で解析して比較検討した。ホモ欠損マウスでは野生型に比べて約80%の発現レベルであった。一方、ヘテロ欠損マウスのMutyh遺伝子の発現は野生型に比べて約1.5倍亢進していた。また、野生型の小腸を三等分してそれぞれの部位でのOgg1, Mutyh遺伝子の発現を検討した結果、肛門側1/3部位では口側1/3と中央部1/3部位と比較して、Ogg1およびMutyh遺伝子の発現が3-4倍亢進していた。KBrO3誘発発がんがこの領域でほとんど認められないことと関係しているのかもしれない。
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