研究課題
大腸癌は本邦で最も頻度が高い癌の1つである。一般に固形癌は高齢者に多いが、超高齢化社会に突入する本邦において、当該疾患の重要性は高い。近年、各種組織幹細胞と加齢との関連、組織幹細胞と発癌との関連が報告されている。しかし大腸において、加齢現象の帰結としての組織老化と発癌の関係について、幹細胞の観点から包括的に行った研究はこれまでほとんどなかった。第9染色体短腕上のCDKN2A遺伝子座(dual-coding gene)にはアミノ酸配列と機能が全く異なる2種類の癌抑制遺伝子、p16^<INK4a>および、p14^<ARF>(マウスでは.p19^<ARF>)がコードされている。両遺伝子産物は加齢マーカーとしても注目されており、最近、p16^<INK4a>は組織幹細胞の加齢現象に深く関わり、p19^<ARF>はp53とともにアンチエイジングと抗腫瘍効果に関与することが示された。本研究はこの2つの遺伝子p16^<INK4a>、p14^<ARF>に注目し、大腸における上皮幹細胞の加齢性変化と発癌過程における両遺伝子の役割を解明することを目指した。pathway解析などを用いた包括的な遺伝子解析により、p19^<ARF>、p16^<INK4a>、p53、RBおよびその上流、下流に位置する遺伝子の発現状況を調査した。本研究は発癌を組織幹細胞の加齢との関連において研究しようとするものであり、組織幹細胞の加齢における変化という観点から発癌を観察することに意義があり、本領域の推進に寄与できる。
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