RAPLのリンパ球における増殖抑制作用の分子機構として、p27^<kiP1>の10番目のセリン残基の脱リン酸化を介する核局在化が関与するかどうかをRAPL-/-マウスとp27^<kiP1>の10番目のセリン(S10)をアラニンに変異させたknock-inマウスを掛け合わせて検討した。RAPL欠損によって生じるB細胞リンパ腫の発症は消失したが、リンパ球増殖疾患である糸球体腎炎は軽減したものの、完全には抑制されなかった。これと一致して、RAPL欠損B細胞の抗原受容体を介する増殖応答の亢進は抑制されたが、T細胞の増殖応答は低下したものの、RAPL欠損によって有意な亢進が残り、エフェクター/メモリーT細胞・抗体産生細胞が増加する個体が認められた。このことから、p^<27kiP1>のRAPLによるS10を介する局在制御は、B細胞の増殖応答の亢進・癌化に重要であるが、T細胞においては、異なる増殖抑制機構が存在することが明らかとなった。RAPLの下流でMst1リン酸化酵素が活性化されることを報告しているので、T細胞における増殖制御にMst1を介するHippo経路が関与するかどうかを検討した。Mob1の35番目のスレオニンのリン酸化を認識する抗体およびYAPのリン酸化を認識する抗体を用いて、Tリンパ球の抗原受容体を介する刺激によって、Hippo経路が活性化されることが判明し、RAPL欠損によって低下が認めれ、この経路の関与が示唆された。
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