がん細胞においては増殖因子受容体および転写因子群の分解以上が頻繁に認められ、その原因の1つとして蛋白分解異常が想定されている。小胞輸送系蛋白Hrs、STAMはユビキチン化蛋白を輸送分解する小胞輸送複合体ESCRT-0に含まれる。ESCRT-0はAMSHがAMSH-LPに会合しこれらの脱ユビキチン化活性ががん関連受容体の分解制御を行っている可能性が高い。実際にYeastで輸送に重要なDoa4は哺乳類ではAMSHに相当することが示唆されており、脱ユビキチン化がESCRT小胞輸送系を介して細胞増殖・アポトーシス制御することと目される。本研究では申請者らが作成したAMSH遺伝子欠損マウスは神経変性疾患を発症し致死であったため、AMSHノックアウトマウスから樹立した不死化細胞株の性状、およびAMSHHへテロマウスにおけるin vivo発がんを解析した。 その結果、1)ノックアウト細胞においてユピキチン化蛋白の蓄積を認めた。2)AMSHの機能低下が発がんおよびがんの悪性化を制御していることが考えられたため、AMSHとAMSH-LPのヒトがん組織での発現を調べた結果、乳がん組織に広汎に発現していた。3)AMSH欠損(ヘテロ)マウス(AMSH+/-;BALB/cバックグラウンド♀)を長期間観察したところ高齢♀マウスに乳がん発症率が高かった。これらの原因として、EGFRおよびHer2等のがん関連増殖因子受容体の発現異常、Wht、Notch等の分解制御異常、ゲノム不安定性などの核内の問題等が想定された。
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